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迫る、東証市場の再編

いよいよ4月4日、東京証券取引所の市場区分が再編されます。

再編にともない商品名を変更した投資信託もあります。

どのように見直されるのか、あらためてみてみましょう。



市場区分の変更内容

現在、東京証券取引所にある4つの市場区分は、3つの市場区分に見直されます。


<変更前>

①市場第一部 2,185社

②市場第二部 474社

③マザーズ  424社

④JASDAQ(ジャスダック)694社

  ↓

<変更後>

①プライム市場 1,841社

②スタンダード市場 1,477社

③グロース市場 459社


2013年に、東京証券取引所と大阪証券取引所が統合された際にも上場会社や投資家に影響が出ないように維持されてきた構造ですが、以下の2つの課題がありました。


①市場区分の違いが曖昧

「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQ」の位置付けが重複するなど、各市場区分のコンセプトが曖昧で、投資家にとって利便性が低い状態でした。


②上場持続基準が曖昧

新規上場よりも上場廃止の基準の方が緩くなっているため、持続的な企業価値の向上の動機付けが十分におこなわれていませんでした。

また、「第一部」へ新規上場するより、市場変更の方が基準緩和されているという不整合な状態でした。

現在、東京株式市場に参加している投資家の半分は、海外投資家だと言われています。

海外投資家の不信感を招いているこれらの課題を見直すことで、わかりやすく投資しやすい環境に整えようとしたのかも知れません。


新しい市場区分のコンセプト

東証が発表した新しい市場区分の特徴は、次のとおりです。


①プライム市場 

「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」


東証1部から1,841社が移行する東京株式市場のなかで最上位の市場区分です。

現在の東証一部の基準よりも厳しい基準をクリアしている企業だけが上場できることになり、社会的信用力と投資先としての魅力が高まると予想されます。


②スタンダード市場

「公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」


東証1部・2部・ジャスダックから合わせて1,477社が移行します。、

スタンダード市場はプライム市場に入れなかった企業というマイナスイメージを持たれてしまう懸念があります。


③グロース市場 

「高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場」


マザーズとジャスダックから合わせて459社が移行します。

他市場に比べて上場基準が低く設定されているため、創業間もない企業やベンチャー企業の市場となることが想定されます。


新しい基準

各市場区分のコンセプトに応じて、流動性(※1)やコーポレート・ガバナンス(※2)などに係る定量的・定性的な上場基準をそれぞれ設定します。

各市場区分への新規上場基準と上場維持基準は原則共通化し、上場後も継続して各市場区分の新規上場基準を維持することになります。

また他の市場区分へ変更する場合には、変更先の市場区分の新規上場基準と同等の基準に基づく審査を改めて受け、その基準に適合することが必要となります。


※1:流動性とは、市場に出回る株式の数・金額の多寡を示す尺度。流動性が高いほど、投資家が売買しやすい銘柄です。

※2:コーポレート・ガバナンスとは、コーポレートガバナンス・コードにおいては「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」とされています。


①プライム市場

以前よりも厳しく、株主数800人以上、流通株式数2万単位以上、流通株式時価総額100億円以上となっています。

新規上場の場合の時価総額は250億円以上、上場維持の場合の平均売買代金が2000万円以上となっています。

またガバナンスの観点から、流通株式比率35%以上、安定株主が3分の2を占めることのない公開性を求めるとしたほか、新規上場で純資産50億円以上、上場維持のためには純資産が正であることも求めました。


②スタンダード市場

株主数400人以上、流通株式数2千単位以上、流通株式時価総額10億円以上、流通株式比率:25%以上が上場基準になります。

また直近1年間の利益が1億円以上の基準もあります。


③グロース市場

株主数150人以上、流通株式数1千単位以上、流通株式時価総額5億円以上、流通株式比率:55%以上が上場基準になります。

高い成長力を発揮するという観点から新規上場時の時価総額は定義されていません。


仮に、上場会社が上場維持基準を充たしていない場合でも、上場維持基準の適合に向けた計画及びその進捗状況を提出し、改善に向けた取組を図ることで、経過措置として緩和された上場維持基準を適用します。


各企業の取り組み

プライム市場に上場することで海外の投資家に注目され、ブランド価値を高めると考える企業は多くあります。

とはいえ、プライム市場の上場維持基準に適合していない企業は296社、スタンダード市場でも321社あります。

当面は経過措置を利用することになりますが、基準をクリアするために対応策を講じる必要があります。

株式優待や株主配当、自社株買いなどで株価に対する取り組みをおこなう企業が増えることが予想され、投資家にとってはプラスになる可能性があります。

また、流通の株式比率を上げるため、大株主による株式の売却、自己株式の消却を発表した企業も多くなっています。


今後のスケジュール

今回の市場再編にともない、東京証券取引所の一部上場企業すべてを対象としている「東証株価指数TOPIX(トピックス)」も変更されます。

4月4日以降しばらくは同じ銘柄を継続採用しますが、2022年10月末から2025年1月末までの移行期間で、流通株式時価総額100億円未満の銘柄を段階的に除外する予定です。


・2022年4月4日 一斉移行日

・022年7月頃   プライム市場上場会社の改訂コードに基づくコーポレート・ガバナンス報告書提出(3月期決算会社)

・2022年10月末 TOPIXのウェイト逓減開始(四半期ごと10回に分けて実施)

・2023年10月末 TOPIXのウェイト逓減の再評価

・2025年1月末   TOPIXのウェイト逓減逓減終了


まとめ

市場区分のコンセプトや上場基準が曖昧だったことも、海外を含めた投資家への不信感を招いていたかもしれません。

その課題を改善し分かりやすく、投資しやすい環境を整えることが再編の目的です。

厳しい基準をクリアするには、時価総額の維持や流動性の向上に加え、企業側のガバナンスの強化なども求められています。

今回の市場区分再編は、世界の投資家が日本企業への投資をあらためて検討するきっかけとなるかもしれません。

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