「老後2,000万円問題」というワードが定着し、老後資金に不安な方のご相談が年々増えてきています。
実際、自己破産の手続きをする方のうち、60歳以上が占める割合が高まってきています。
1.老後破産とは
「老後破産」とは、老後の生活資金に困り、自己破産をせざるを得ないような状況に追い込まれることをいいます。
日本弁護士連合会「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」では、60歳代以上が占める割合は、約26%と高くなっています。
特に、70歳代以上は、前回の調査で一時減少したものの、1997年の調査以降、増加傾向にあります。
多重債務に陥った原因として、多いのは
①生活苦・低所得 61.69%
②病気・医療費 23.31%
③負債の返済(保証以外) 20.48%
④失業・転職 17.58%
⑤事業資金 16.13%
となっています。
前回調査よりも、「生活用品の購入」「教育資金」「クレジットカードによる購入」の割合が高くなっているところを見ると、日常生活において家計の負担が自己破産につながったと考えられます。
高齢者の方は、勤労収入がなく年金に頼らざるを得ない場合が多いでしょう。
また、企業年金をもらっていても、受給期間が終了し、それ以降の収入が激減してしまうと生活苦になってしまいます。
2.老後破産しやすい人の特徴
このような調査結果にもあらわれていますが、老後破産をしやすい人には、ある共通した特徴があります。
(1)性格
①寂しがり屋
寂しがり屋な人は、人との接点を持ちたいがために、交際費など、つい散財してしまいます。
退職後は人と話す機会も減り、年齢とともに友人や知人が亡くなり、孤独を感じやすくなります。
②しっかり者
しっかり者は、まじめであるがゆえに、家族に心配をかけたくないと、生活が苦しくなっても自分で抱え込んで相談できない場合があります。
③病気がち
若い頃は体力に自信があっても、年齢を重ねるごとに体力が衰え病院にかかる回数も増えてきます。
また、介護が必要になると、日常生活を送るにも今まで以上に費用が掛かってしまいます。
(2)生活スタイル
①生活水準を落とせない
定年後、収入が減ったにも関わらず、現役時代と同じような支出を続けていては、貯蓄が底をついてしまいます。
今は、年収が高くても貯蓄が少ない人は、特に注意した方がいいでしょう。
②住居費の割合が高い
最近は、晩婚化が進み、住宅ローンの完済が定年後になるケースも増えてきました。
金融機関の審査基準では、年収に占める年間返済額の割合である「返済比率」は35~40%以内に設定されていることが多いようです。
実際には、住宅ローン以外にも、月々の費用として、固定資産税や修繕費、マンションの管理費なども継続して発生します。
また、リストラや病気・ケガなどで収入が不安定になるリスクもあります。
理想的な返済比率は手取り収入の20%、最大でも25%にとどめておきたいところです。
③子どもにお金をかけすぎる
こちらも住宅費と同じく、晩婚化にともない、定年後も、子どもが高校生や大学生で学費がかかるケースが増えてきています。
子どもに十分な教育を受けさせたいがあまり、生活水準以上に無理をして教育費をかけると、思うように貯蓄ができないまま老後を迎えることになります。
また、子どもが職を失って実家に戻ってくるなど、自立する年齢になっても生活費の面倒をみなければならないこともあるかも知れません。
(3)人間関係
①頼れる人がいない
老後は、他人との接点が減り、社会的に孤立してしまったり、体調を崩して医療費がかさむ場合があります。
また、最近では高齢を狙った詐欺や怪しい勧誘が多くなり、大事な資産を失うこともあります。
そんなとき、すぐに相談できる頼れる人がいれば、防止できる確率が高くなります。
②夫婦仲が悪い
夫婦関係が悪くなり、ストレスから散財に走っているという可能性があります。
また、定年後、生活スタイルが変わり、一緒に過ごす時間が長くなるとストレスを感じる場合もあります。
1人の時間をつくったり、共通の趣味を持つなど、お互いに楽しく暮らす工夫をしてみるのもいいかもしれません。
③熟年離婚をする
ご主人の定年後に離婚するような「熟年離婚」も老後破産のリスクを高めます。
専業主婦やパートの場合、自身の公的年金は月数万円程度になってしまうことも多くあります。
離婚したとき、配偶者の厚生年金を分割できる「年金分割制度」を当てにする方もいらっしゃいますが、婚姻期間中の厚生年金を分けられるにすぎません。
したがって、配偶者が自営業の場合は、年金分割はないでしょう。
また、一般的に生活費は、2人よりも1人の方が割高になります。
3.対策方法
(1)家計を見直す
①収支を確認する
家計を見直すには、いくら入っていくら使っているか、収支を確認することが重要です。
収支がわかると、将来の生活設計も立てやすくなります。
そのためには、家計簿をつけるのが最適です。
②節約する
収支を確認すると、必要ないような支払にも気づいたりします。
家賃や通信費などの固定費は、見直しに手間はかかりますが、節約効果は高くなります。
(2)資産を増やす
①定年後も働く
体力があれば、定年後も働く、年収が高い会社に転職する、脱サラして個人事業主で稼ぐ、パートの方は自分の厚生年金に入る、専業主婦の方は働きに出るなどがあります。
副業が許されているな会社なら、それもいいですね。
②年金を増やす
今から、国民年金に上乗せする方法もあります。
「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、老後資金を積み立てながら、節税効果も高い制度です。
その他、会社員であれば「企業年金」、個人事業主であれば「付加年金」や「国民年金基金」などに加入する方法もあります。
また、働きながら60歳以降の国民年金に任意加入することもできます。
また、国民年金の受給開始を繰り下げることで、受給額を増やす方法もあります。
1ヶ月ごとに0.7%増額されますから、70歳まで繰り下げると42%増額 75歳まで繰り下げると84%増額になります。
③資産運用をする
今の銀行預金は低金利のため、資産はなかなか増えにくい状況です。
それに比べ、元本保証はありませんが、投資は増えることが期待されます。
今は、利益に課税される税金が非課税になる「NISA」「iDeCo」を利用するのが得策です。
(3)困ったときは相談する
①商品やサービスで困ったとき
地方公共団体が設置する消費者の窓口として、「消費生活センター」があります。
消費生活全般だけでなく、自治体の多くは、借金問題についても相談することができます。
②過払い金や借金があるとき
債務整理について、弁護士に相談することおできます。
過払い金の取り戻しや、借金の返済の負担を減らすことができるかも知れません。
③老後資金に不安があるとき
将来のお金について相談するなら、金融機関またはファイナンシャルプランナーなどが向いています。
老後のお金を増やすために、みなさまに合った方法を提案してくれるでしょう。
4.まとめ
今の生活にはゆとりがあっても、医療や介護など、老後には思わぬ費用が掛かってきます。
老後破産を防ぐ最も有効な対策は、今の生活の収支を把握し、将来のリスクに必要な金額を確認しておくことです。
今のうちから、節約や資産運用で備えておきましょう。
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