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日本の個人向け社債 今なら投資する?しない?

日本の社債は、楽天グループが2年で3.3%という高い利率の社債を発行したことで、ますます注目されています。

ですが、注意しないと、先日のクレディ・スイスのように、紙切れになってしまう恐れもあります。

1.今、社債がアツい


(1)最近の発行状況


最近、社債の発行額が増え、2022年度は2兆3,000億強と過去最高水準に迫りました。

最近の発行の特徴は、償還期間が中短期の高金利や、カゴメのように株主優待のような側面を持つ社債など、以前より多様化していることです。


(2)人気の理由


社債に人気が出てきた理由は、いくつかあります。

社債を発行する企業側としては、銀行からの借入金と異なり返済のタイミングや方法を自由に決められること、経営権などに影響しない、株式が希薄にならないなどです。

そして、個人にとっては利率です。

日本の長期金利とともに、個人向け社債の利回りも上昇しています。

表は、今年1月から3月までに発行され、購入金額が100万円以下のものから、いくつかピックアップしたものです。

格付けは、起債当時としています。


例えば、「GMOインターネットグループ」は5年で1.6%、「三井住友フィナンシャルグループ」は10年で1.667%と、かなり魅力的な利率です。


これくらいの金利水準であれば、個人投資家にとっても、購入意欲が高まります。


ですが、社債が人気だと言っても、馴染みがない方もいらっしゃるのではないでしょうか?


日銀の統計では、昨年9月末の個人の金融資産約2000兆円の内訳は、現金・預金が55%を占める一方、社債などの「債務証券」は、わずか1%にとどまっています。


浸透していない理由は、日本企業の発行額が少なく、個人が買えるのはほんの一部に過ぎないこと、そして、証券会社に口座を持っていないと購入できないことなどが考えられます。


2. 社債の基本をおさらい


(1)社債とは


社債とは、債券の発行体である企業などが、投資家から資金を借りるために発行する有価証券です。

投資家が企業に、お金を貸した状態になるため、借用書のようなものです。

社債を購入すれば、定期的な利子や売却益などを得ることができます。


社債の多くは、最低購入単位が1億円など機関投資家向けに発行されますが、最低購入単位を100万円以下など、個人投資家でも購入しやすいように設定しているものを「個人向け社債」と言います。


(2)社債の種類


社債と言っても、種類はさまざまです。

募集形態では、不特定多数の投資家を対象とする「公募」と、ごく少数を対象とする「私募」に分けられます。

他、一般的には、大きく5種類に分類されます。


①普通社債(SB)


一般的に、「社債」と呼ばれるものは、この「普通社債」に該当します。

「ストレート・ボンド(SB)」と呼ばれることもあります。

満期まで利子が支払われ、満期には償還金額が支払われるというシンプルな社債です。


②転換社債(CB)


正式名は、「転換社債型新株予約権付社債」です。

Convertible Bondを略して、「CB」と呼ばれることもあります。

債券としての性格を持ちながら、一定の条件を満たせば株式にも転換できる社債です。


③ワラント債(WB)


決められた一定の金額で、発行体の株式を買える権利(新株予約権=ワラント)が付いた社債です。

種別は転換社債と同一ですが、ワラント債は株式の購入に別途費用が必要になること、株式を購入しても社債として手元に残ることが異なります。

正式名は「新株予約権付社債」、「WB」と呼ばれることもあります。


④劣後債


債券と株式の両方の特質を持つ「ハイブリット証券」と呼ばれるものの一つです。

発行会社が利子や償還金が支払えない「債務不履行(デフォル)」に陥ったときに、返済される順位が低い社債です。

リスクが高いことから、普通社債よりも、利回りは高めに設定されます。


⑤電力債


電気事業法に基づいて、電力会社が発行する社債です。

電力債の大きな特徴は、一般企業が発行する社債と異なり、他の債権者に優先して弁済が受けられる「一般担保」がついていることです。

無担保が多い普通社債とは異なり、担保を付けて、元本を回収できないリスクを低くしています。


(3)普通社債のメリット


①金利が高い


社債の利率は、通常、国が発行する国債よりも高く設定されます。

なぜなら、債務不履行(デフォルト)になる可能性は、国よりも企業の方が高いと考えられるからです。

この債務不履行になる可能性を「信用リスク」と言います。

信用リスク分を、国債の金利に上乗せ(スプレッド)して、投資家を引き寄せる必要があります。


例えば、2月に起債した「ソフトバンク」の5年社債の利率は0.98%。

同じ年限の国債の市場金利は、当時、約0.2%。

0.8%弱の金利差は、ソフトバンクの信用リスクを反映していることになります。


社債は、リスクがゼロではありませんが、定期預金や国債と比較すると、魅力的な金利です。


②満期に元本が返ってくる


債務不履行(デフォルト)さえなければ、決まった利息を、決まった期間で受け取り、満期になれば元本が返ってきます。

購入する前から、いつ、いくら支払われるか、利益の計算ができます。

使う予定がある資金を充てるなど、投資計画が立てやすいですね。


また、債券は通常、株式ほど大きな値動きをせず逆の動きをするため、株式が下落したとしてもカバーすることができます。

複数の資産に分散投資して、ポートフォリオを組むのも大切です。


(4)普通社債のデメリット


①倒産するリスクがある


発行体は企業であり、その企業が倒産してしまうと、投資した元本や利子の支払いに、支障をきたす恐れがあります。


②途中で売却しにくい


社債の売買は、証券取引所を介して取引する株式と異なり、取引所を介さず、証券会社と直接取引する「相対取引」になります。

売却しようとしても、なかなか買い手が見つからなかったり、価格は証券会社が決めるため、事前に把握することが難しくなります。

換金しやすいかどうかを「流動性」と言いますが、社債は、この流動性が低いと言えます。


3.今なら、社債に投資する?


日本の社債への投資は、大きく分けて「債券」か「投信」を購入する方法があります。


(1)債券と投信、どっちにする?


債券(普通社債)と投信(非上場投信)では、いくつか異なる点があります。

大きくは、「元本の返済義務」「満期」「リターンの確定」「手数料」「流動性」「NISA対象」などです。

債券か投信か、どちらか一つを選択するとなると、投資の目的を考えると絞りやすいでしょう。

例えば、「何年後かに使う予定がある」「利息は確定している方がいい」「コストをかけたくない」場合は、債券の購入が向いているでしょう。

また、「値上がりを期待したい」「途中で換金したい」「1社では債務不履行が心配」「NISAの非課税枠を利用したい」場合は、投信の購入が向いているでしょう。


ただ、投信の場合は、国内債だけで運用している商品は、現在の国内金利では、コスト分を埋めれず実績がよくないものもあります。

また、最近の人気商品のなかには、「持ち切り運用型」というものがあります。

購入できる期間を限定している点や運用期間が5年程度と短い点などが、一般的な投信とは異なります。

運用期間中に満期を迎える社債などに投資して、運用期間を終えると投資家に資金を返済するという仕組みですが、途中解約すると元本割れしたり、投資先に問題がある場合もあります。


債券、投信、どちらにしても、組み入れる投資先の内容を調べることは重要です。


(2)債券を買う時にチェックすること


①格付け


社債を発行した企業が経営破綻すれば、債務不履行(デフォルト)となり、投資家に元本が返済されない場合があります。

信用リスクを判断するための材料の一つは、格付け会社が公表している「格付け」です。

債券の発行企業の債務返済能力の度合いをアルファベットでわかりやすく示しています。

表示は、格付け会社によって多少異なりますが、一番上の「トリプルA」から「トリプルB」までが投資適格とされます。

「ダブルB」以下は、債務不履行(デフォルト)の可能性があり、投機性が高い分、利率は高くなるため「ハイイールド債」と呼ばれています。


格付けに絶対的な保証はありませんが、大きな目安になります。

証券会社の商品ページや目論見書に記載されていることがあるため、確認しておきましょう。

初心者の方は、なるべくシングルA以上の社債を買うのが望ましいのではないでしょうか。


また、社債を発行した当初は格付けが高くても、業績の悪化などで低くなることもあります。

1月起債の「楽天グループ」は、2年で3.3%という好条件でしたが、格付け会社の一つである格付投資情報センター(R&I)が、3月に「A」から「トリプルB」に引き下げました。

その他、過去には「マイカル」「武富」「JAL」のような有名企業の社債も「デフォルト(債務不履行)」しています。

大企業だからと安心せず、格付けの他、その企業の業績や株価なども、個別に調べて総合的に判断しましょう。


②利率


利率は額面に対して支払われる利子の割合で、株式では配当利回りのようなものです。

当然、ここが高いほど、魅力的です。

ただ、利率が高くても、購入時の価格が高かったり、格付けが低い場合がありますので、注意しましょう。


③残存年数


「残存年数」とは、償還までの残りの年数です。

そもそも、債券の価格は金利が上昇すれば下がり、金利が下降すれば上がるという仕組みになっています。


最近では、「アメリカ債券はバーゲンセール」だと言われますが、これは、急上昇してきた金利がそろそろピークアウトして、価格が上昇していくのではないかという点がベースになっています。

そうなれば、高い利息を受け取りながら、売却益も狙えます。


逆に、未だ低金利政策をとっている日本は、金利が上昇する可能性があり、その場合、社債の価格は下がることになります。

この社債価格が下がる可能性と、本来の流動性の低さを考慮すると、満期まで持ちきりになる可能性が高くなります。


3月までの発行は5年以下の中期短期のものが目立ちましたが、4月以降は10年以上の長期のものも目立つようになりました。


満期まで持ちきりになる可能性が高ければ、利回りが高くても、どこまでの残存年数のものにするか考えた方がいいですね。


一般的に、債券は残存期間が長いほど、価格変動の幅(ボラティリティ)が大きくなります。

今後、日本の金利が上昇していくのであれば、残存期間が長い社債ほど、価格は下落していきます。

「今後、金利が上がりそう」「大きな値下がりは避けたい」場合は、残存年数が5年未満の方がいいでしょう。

当然、償還まで使わない余裕資金で投資しましょう。


④特約


先日、クレディ・スイスの社債が無価値となるという、衝撃的な出来事がありました。

通常、債務不履行になった場合の返済順位は、預金、社債(普通社債、TLAC債、劣後債、AT1債)、株式となります。

今回、株式よりも先に社債が無価値になった要因は、元本削減に至る条件の1つに「公的機関による特別な支援」という特約にあります。


社債の各銘柄の正式名称は、企業の名前や回号に続き、場合によっては条件や特約の種類などが記載されます。

現在の発行の主流は、担保が設定されていない「無担保社債」です。

そのほかの特約は、順位が後回しになる「劣後特約」、不利が生じないように設定された「社債間限定同順位特約付」など、さまざまです。


極力リスクを抑えたい場合は、優先的に弁済される権利が付いている「一般担保付」の電力債が向いているかも知れません。


つい、発行する企業名だけに囚われがちですが、元本返済に関わる重要な部分のためチェックしましょう。


(3)注意すること


①仕組債


仕組債は、デリバティブを利用する特殊な社債で、通常の社債よりも金利を高く設定しています。

しかし、条件次第では大きく元本割れする可能性もあります。

「EB債(他社株転換可能債)」や「リンク債(株価指数連動債)」と呼ばれる形で発行されることが多くあります。

分類上は社債ですが、実態はハイリスク・ハイリターンの金融商品です。

仕組みが複雑なことからトラブルが相次ぎ、規制強化や販売を停止する銀行も増えています。

投資初心者の方は、避けた方が無難でしょう。


②投資詐欺


新規公開株や社債は、投資詐欺としてよく利用されます。

実態のない企業の社債を販売し、始めの内は利息が支払われるものの、数回後には支払いが滞り、連絡も取れなくなると言う被害が見られます。

勧誘してきたのが取引している証券会社かどうか、インターネットの検索サイトで検索すると実在する会社かどうかなど、チェックしてみましょう。


4.まとめ


社債を購入しようと思っても、すぐに完売することもあります。

事前に証券会社で口座開設をしておかないと、間に合わないことも多々あります。

また、購入したい社債があっても、取扱っているかどうかは、証券会社によって違うため、どこで開設するかも重要です。


過去に、発行された社債の内容や幹事証券、売買価格などは、「日本証券業協会」のサイトで閲覧することができます。

すでに募集は終了していますが、どの証券会社にするか、どんな社債にするのかなどの参考になるでしょう。


ご自分の投資の目的や資金の性格などによって、社債投資もポートフォリオに組み入れてみてはいかがでしょうか。


※実際の投資は、ご自身の判断でお願いします。


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