最近は、物価上昇やNISA改正、政府の声かけなどから、投資を始める方が増えてきました。
ですが、現在6,000本ほどある投資信託の中には、投資初心者の方には向かない商品もあります。
1.投資信託をおさらい
(1)投資信託の基本
本題の前に、投資信託について、簡単に、おさらいしておきましょう。
「投資信託」とは、銀行や証券会社などを経由して、たくさんの投資家から集めた資金を一つにまとめ、投資のプロであるファンドマネージャーが運用し、その成果を投資家に分配する「金融商品」のことです。
「ファンド」、とか、省略して「投信」などとも呼ばれます。
(2)メリット
投資信託の最大のメリットは、利益への期待、NISAの利用対象である点です。
でも、その他にも大きく3つあります。
①少額で始められる
投資信託は、他の金融商品より比較的少額から購入できます。
通常は、1万円位から利用できます。
積立の場合は、1,000円や100円で利用できる金融機関もあります。
株式も以前よりは、少額で購入できるようになりました。
100株への単元統一や、1株から購入できるミニ株が利用できる証券会社もあります。
また、株式分割をおこなう企業が増え、中にはNTT株のように2万円弱で購入できる企業もあります。
とはいえ、初心者の方にとっては、いきなり株式というのはハードルが高いと言えるでしょう。
②投資のプロが運用
投資する資産や国の経済状況、個別商品の分析は、なかなか難しいものです。
投資信託は、投資のプロであるファンドマネージャーが豊富な知識や経験を活かして投資家に代わって、運用します。
個人では買いにくい海外ものや、特殊な金融商品への投資も可能です。
③分散投資ができる
資産への投資は、複数に分散した方が、リスク軽減できます。
分散投資はとても重要なことで、「卵を一つのカゴに盛るな」という投資格言があるほどです。
個人で分散投資をおこなうには、かなりまとまった金額を必要としますが、投資信託であれば、その心配はありません。
(3)デメリット
ですが、デメリットも大きく2つあります。
①元本保証ではない
銀行員から提案されると、銀行預金と混同される方もいらっしゃいますが、投資信託は投資商品。
利益が期待できる反面、リスクもあります。
②コストがかかる
投資信託は、運用をプロに任せたり、管理をお願いしたり、状況を教えてもらったりと、運用するための費用がそれぞれ発生します。
つみたてNISAの対象商品の他にも、販売手数料がかからない商品はありますが、保有している間は「信託報酬」が常にかかります。
投資信託にはデメリットもありますが、メリットをみると投資初心者の方に向いた金融商品だと言えます。
2.新NISAは初心者向き?
(1)新NISAはどう変わる?
投資を始めるきっかけが、NISAだったという方もいらっしゃるでしょう。
NISAは改正し、来年の1月からは新NISAとしてスタートします。
投資信託を今から始めるにしても、来年から始めるにしても、どう変わるのかを見据えておくことで、より効率的に資産運用ができます。
また、新NISAと投資初心者向き商品は、密接な関係があるため、改正点を簡単におさらいしておきましょう。
NISAとは、少額投資非課税制度の愛称です。
株式や投資信託を売却したときや、配当をもらった時の利益にかかる約20%の税金がかからない、個人向けの非課税制度です。
現在のNISAは、成人用の「つみたてNISA」と「一般NISA」。
そして、未成年用の「ジュニアNISA」の3種類です。
ジュニアNISAは2023年で終了します。
継続する「一般NISA」「つみたてNISA」の変更点は、大きく5つ。
①つみたてNISAと、一般NISAが併用できるようになる。
②口座開設が、いつでもできるようになる。
③非課税保有期間が無期限になる。
④年間投資枠が拡大する。
⑤新たに、「生涯の非課税投資枠」1,800万円が設けられる。
(2)今しか買えない商品とは
新NISAは、現在のNISAより、非課税枠の拡大、非課税期間の無期限化と、かなりバージョンアップしますが、内容の一部に制限が設けられました。
新NISAは、投信を積み立てる「つみたてNISA」の後継として「つみたて投資枠」、そして個別株も対象とする「一般NISA」の後継として「成長投資枠」。
この2つの枠に分かれることで、両方を併用することができます。
制限が設けられたのは、一般NISAの後継である「成長投資枠」。
この「成長投資枠」の投資信託の対象について、
①毎月分配型
②信託期間が20年未満
③リスクヘッジ目的以外のデリバティブ(指数の2~3倍になるようなレバレッジなどの金融派生商品)
が、対象外となります。
そのため、この3つの項目に当てはまる商品を、NISAを利用して購入したい場合は、今年が最後になります。
つみたてNISAは、新NISAになっても基準は変わりません。
現在は、230本ほどですが、当初より少しずつ増えつつあります。
毎月分配型商品を保有したい場合は、現在の一般NISAで購入するか、来年の新NISAで毎月分配金が受け取れるように複数商品を購入するか、課税で購入するかという3択になります。
レバレッジの高い商品で利益を狙いたいとか、短期間で勝負したいという場合は、現在の一般NISAで購入か、来年の課税での購入かの2択になります。
ただし、現在の一般NISAで購入する場合は、非課税期間5年のため、6年目以降に課税対象となっても保有し続けるかどうかも、合わせて考えておく必要があります。
具体的な「成長投資枠」の対象商品は、6月21日に投資信託協会が国内外の株や債券などで運用する約1000本の投信を発表しています。
積立で人気の「eMAXIS Slim」シリーズや、日本株で運用する投信の中で残高最大の「ひふみプラス」は、対象になっています。
対象商品の発表は、今後も毎月おこない、現在の6,000本の内、最終的には今回の1000本と合わせて約2000本になると言われています。
(3)つみたて投資枠は初心者向き
先ほど少し触れましたが、新NISAと投資初心者向けの商品には、深い関連性があります。
もともと、現在の「つみたてNISA」(新NISAでは「つみたて投資枠」)の対象商品は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託になっています。
これは、投資初心者の方でも、安定して資産形成に取り組みやすいようになっています。
そして、現在の「一般NISA」では、対象の公募投信について制限はありませんでしたが、新NISAの「成長投資枠」では、長期の資産形成に適しない商品は除外されます。
個別株式についても、上場廃止の可能性や決定した銘柄も対象外となります。
買ってはいけない投資信託は、こういった長期運用に向かない商品とも重なります。
そういう意味でも、新NISA対象の投資信託は、投資初心者向きの商品と言えるでしょう。
3.投資信託を買うときの注意点
これまでお伝えした内容を踏まえて、初心者の方が投資信託を購入するときに注意してほしいことが3つあります。
(1)オススメ商品が適切とは限らない
数ある商品の中から1つを選択することは大変な作業です。
そんなときは、友人や金融機関の人など、投資に詳しい方に頼るのも方法です。
ですが、必ずしも、その商品が自分に適しているとは限りません。
二つ返事で話を鵜呑みにするのではなく、購入する理由が明確に説明できるくらい納得してから購入するようにしましょう。
(2)ランキングに振り回されない
みんながどういう商品を購入しているのか、つい人気商品に目が向いてしまします。
ランキング商品を参考にする程度は構いませんが、これも、オススメ商品の場合と同様に、納得してから購入するようにしましょう。
(3)目論見書には目を通す
交付目論見書は、購入する前に必ず交付される「投資信託の説明書」で、投資判断に必要な重要な事項が書かれています。
ネットで購入するときは、一読しなければ購入画面に進めませんが、文字が多いため、ついスクロールしてしまいがちです。
そのファンドの「特色」「リスク」「実績」「コスト」などは、だいたい同じような場所に記載されていますから、少なくとも、このくらいは、目を通しておきましょう。
4.買ってはいけない投資信託
それでは、ここからは買ってはいけない投資信託のジャンルについて、全部で7つ、解説していきます。
(1)テーマ型
テーマ型とは、「AI」や「宇宙」などのように特定のテーマに関連する企業に投資する投資信託です。
ある程度、話題になった後に新規設定されることが多く、購入する時点では既に基準価額がピークになっている可能性があります。
また、テーマ型にはアクティブファンドが多く、信託報酬などのコストはやや高めです。
投資信託の償還日である「信託期間」も、短いものが多くあります。
信託期間が20年未満の商品は、新NISAの対象外です。
信託期間が延長されることもありますが、運用成績次第というところもあり、長期運用には、適しているとは言えないでしょう。
(2)毎月分配型
「毎月分配型」とは、毎月、分配金が支払われる投資信託です。
これも、新NISAの対象外です。
投資信託の分配金には、運用で得た利益を基に支払う「普通分配金」と、成績不振で元本から取り崩す「特別分配金」の2種類があります。
毎月分配型は、後者の元本から取り崩す「特別分配金」(タコ足配当)になっていることが多くあります。
この場合、NISAで購入していたとしても、非課税のメリットが享受できないうえ、他の商品との損益通算もできないという状況に陥ってしまいます。
また、分配頻度が高ければ高いほど投資元本が減り、利益の場合も分配金の支払いの度に税金が引かれ、複利効果も薄れ、投資効率が下がってしまいます。
特に、「特別分配金」が長く続いている、基準価額が下がり続けているような投信は注意が必要です。
(3)デリバティブ
デリバティブとは、株式や債券などの原資産の価格を基準に価値が決まる金融商品の総称です。
「金融派生商品」とも呼ばれます。
新NISAでは、ヘッジ目的以外で利用している商品は対象外です。
アメリカのナスダック指数にレバレッジをかけた「レバナス」や、基準となる指標の値動きよりも大きな収益を目指す「ブル・ベア型」なども、このデリバティブに含まれます。
ちなみに、指数の上昇で利益が出るのが「ブル型」、下落で利益が出るのが「ベア型」です。
デリバティブは、伝統的な金融商品とは異なった値動きをするため、投資知識を必要とする「ハイリスク・ハイリターン」の商品です。
(4)損失限定型(リスク限定型)
損失限定型とは、基準価額があらかじめ設定した下限まで下落した場合、当初決まっていた償還日より前に「繰上償還」する投資信託です。
たとえば、設定した下限が9,000円の場合、基準価額が9,000円を下回ったときに自動的に繰上償還されてしまいます。
基準価額が、この9,000円をさらに下回ったとしても、9,000円で換金できるため「損失限定型」と呼ばれています。
ですが、繰上償還されると限定されるとはいえ、その時点で損失が確定してしまいます。
そうなると、その後、仮に基準価額が値上がりしたとしても、その恩恵は受けられないことになります。
また、運用中にかかるコスト「信託報酬」も、やや高めのものが多くあります。
損失を押さえたい場合は、投資の比率を下げたり、株式比率の低いバランス型や信託報酬の低い投資信託を購入した方が無難かも知れません。
(5)ターゲットイヤー型
ターゲットイヤー型とは、目標とする年を決め、その年に向けて積極運用から安定運用へと組み入れ資産の比率を変更していく投資信託です。
組入れ資産の比率を自動的に変更してくれることは、一見、便利に見えますが、リスクに対する許容度は一律に年齢だけで決まるものではありません。
収入、資産、投資経験、ライフイベントの数などによっても、個別に異なります。
自動調整されてしまうと、株式を長期保有したときに得られた利益をかえって、逃してしまうかもしれません。
また、こちらも、信託報酬はやや高い傾向があります。
(6)通貨選択型
通貨選択型とは、投資する資産の値上がり益や配当などに加えて、選択した通貨の為替差益や為替取引による通貨の金利差(プレミアム)も得ようとする投資信託です。
収益は、①投資対象資産による収益、②為替変動によるプレミアム(金利差相当分の収益)、③為替変動による収益の3種類になります。
仕組みは複雑で、投資初心者の方が理解するには難しいものがあります。
どうなった場合に利益が出て、損をするのか。
内容がよく理解できないうちは、こういった商品は避けた方がいいでしょう。
また、こちらも、信託報酬は高めになります。
(7)ファンドラップ
ファンドラップとは、投資家と金融機関が「投資一任契約」を結び、金融機関のプロに投資信託の売買や運用を任せするサービスです。
以前は、取引が数千万、数億という富裕層向けのサービスでしたが、最近では、300万円程度まで引下げ、一般の方でも利用しやすくなっています。
運用を全部任せるというのは便利なんですが、このサービスを利用した場合、コストが二重にかかってしまいます。
通常の投資信託を購入するときと同じく「販売手数料」(無料の場合もあります)、「信託報酬」に加えて、ファンドラップ用に「口座管理手数料」「投資一任手数料」といった費用がかかります。
コストの負担は、特に長期運用の場合は運用成果に大きく影響します。
また、プロが自分用にカスタマイズしてくれると言っても、必ずしも儲かるものでもありません。
5.まとめ
最近は、さまざまな金融商品が登場し、情報もあふれています。
一見、便利そうだったり、儲かりそうだったり、魅力的な投資信託はたくさんありますが、投資初心者の方は、キャパオーバーにならないかを十分に考えてから、選んでいただきたいと思います。
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