人は、時として理論的に説明できない感情や心理によって冷静に投資判断できないことがあります。
それは、無意識のうちにあなたの投資戦略だけでなく市場にも少なからず影響しています。
もし、投資がうまくいっていないと感じるなら、「行動ファイナンス」「認知バイアス」を知ることで、その原因が分かるかも知れません。
行動ファイナンスとは
ファイナンスの分野に心理学を取り入れた理論です。
「人は常に合理的に行動するとは限らない」という前提で、人の心理面などが金融市場にどのような影響をおよぼしているかを研究しています。
代表的なものが「プロスペクト理論」です。
①ある地点からの変化の大きさによって価値を決める「参照点依存性」、②利益よりも損失の苦痛のほうが大きく感じる「損失回避性」、③損得の金額が大きくなるほど感覚が鈍ってくる「感応度逓減性」という3つの特徴を解説しています。
認知バイアスのうち意思決定バイアスの1つになります。
2002年にプリンストン大学のダニエル・カーネマン博士が展開し、ノーベル経済学賞を受賞しました。
認知バイアスとは
バイアスとは、偏りや歪みという意味です。
思い込みや先入観によって、非合理的な判断をしてしまう心理現象のことを「認知バイアス」と言います。
おもな原因は、生活習慣や経験をもとにした固定観念などです。
認知バイアスは、非合理的な判断を避ける対策をするうえで、日常だけでなく、ビジネスや投資にも活用されています。
投資で陥りやすい心理
よく見られるものをご紹介します。
①損失回避
利益の喜びよりも損失の苦痛を避けます。
値上がりしていても早めに利益確定しようと売却します。
②後悔回避
失敗して後悔しないように、リスクのある選択を避けます。
資金が必要になったとき、損失が出ている銘柄ではなく利益が出ている銘柄を売却します。
③自信過剰バイアス
自分の知識や能力を過信します。
損失は営業担当者のせいで、利益は自分の実力だと思いがちです。
④近視眼的行動
目先の利益にとらわれてしまいます。
分配型の投資信託は、年1回分配より毎月分配を好みます。
⑤アンカリング効果
先に入手した数字や情報を基準にします。
自分が買った値段を売買の基準にします。
⑥心の会計(メンタルアカウンティング)
取得方法や目的別にお金を色分けして、それぞれ独立に会計します。
売却益と配当を別々に考えたり、株主優待もあるから株価は下がってもいいと考えます。
⑦利用可能性ヒューリスティック
自分が思いつく情報を基準にします。
ニュースで取り上げられていたり、あの人が勧めるなら大丈夫だろうと考えます。
冷静に判断する3つのコツ
①投資ルールを決める
例えば、20%値上がりしたら売却するなど、最初から利益確定や損切する基準を決めておくと、感情によって判断に迷うことがありません。
②前提を疑う
保有している株式の値下がりは、日経平均が下落しなくても起こったかもしれません。
自分が考える因果関係は事実かどうか、先入観が含まれていないか前提を疑う批判的な視点で向き合えば本質を発見する手掛かりになります。
③客観的にみる
自分の意見が正しいと決めつけずに、他の人の考え方や不都合な意見にも耳を傾けることで客観的にものごとをみることができます。
まとめ
日常と同じく、投資においても常に合理的な行動ができるとは限りません。
行動ファイナンスや認知バイアスを知ることは、投資判断で陥りやすい心理的な落とし穴を避けることにもつながります。
たいせつな判断をするときや期待通りにいかないときは、一度立ち止まり、非合理な投資行動をしていないか見つめてみるのも必要です。
それでも解決しなかったときは、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するという方法もあります。
※投資は、ご自身の判断でお願いします。
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