昨年から原油価格が高騰し、今年に入ってからも食品や電気料金などの値上がりが続いています。
物価指数が上昇し、欧米だけでなく日本にも長いインフレの兆しが見えてきました。
物価指数とは
物価とは、モノの価値。
物価指数とは、ある時点から現在までの変化を指数化したものです。例えば、りんごが100円のときを指数100とした場合、110円になったときは指数110となります。
物価指数はいくつかありますが、ここでは2つ説明します。
(1)企業物価指数
企業間で売買するモノの価格水準を数値化した物価関連の経済指標です。
日銀が2月10日に発表した1月企業物価指数は、前年同月比で8.6%上昇し、8カ月連続で上昇率が5%を超え、1970年代の石油ショック以来の長さとなりました。
(2)消費者物価指数
消費者が購入するモノの価格水準を数値化した経済指標で、CPI(Consumer Price Index)と略されることもあります。
「経済の体温計」とも呼ばれ、国内の経済政策を決めるうえで重要な指数として使われています。
総務省が1月21日に発表した12月の消費者物価指数は、電気代などのエネルギー関連が全体を押し上げ前年同月比で0.5%上昇し、4カ月連続でプラスとなっています。
2021年春から格安プランを導入した携帯電話大手の影響を除けば、物価上昇率は2%前後になると言われています。
アメリカでは1月に前年同月比7.5%と約40年ぶりの上昇を記録しています。
インフレとは
インフレーションの略で、生活で購入している日用品やサービスの値段(物価)が上がることです。
インフレには、良いインフレと悪いインフレがあります。
良いインフレは、消費需要にけん引されて価格が伸びる景気の拡大をともなうデマンドプルインフレです。
悪いインフレは、原材料の高騰を商品価格に転嫁できない企業の業績悪化から景気が縮小するコストプッシュインフレです。
インフレになる原因
一般的に、海外からの輸入が多い日本の場合、輸入品価格の上昇によりインフレを引き起こすことが考えられます。
輸入物価の上昇率は、円ベースで37.5%と円安の影響により輸入品の値上がりも大きくなっています。
また、原油などのエネルギー資源の価格上昇も輸送コストや原材料コストとしてインフレを招きます。
現在、コストを上昇させているのは原油や穀物などの商品(コモディティ)の高騰です。
従来であれば、国際商品市況の上昇により供給が増えるとともに需要が減少し価格は均衡しますが、現在は価格の高騰に歯止めがかからない「スーパーサイクル」です。
(1)原油
需要増に加え、脱炭素やウクライナ情勢の悪化で供給が懸念されます。
(2)食品
小麦は異常気象やコロナ禍に伴う労働力不足といった要因から供給不足であり、脱炭素の影響によりガソリンの代替としてトウモロコシやサトウキビ、大豆油、菜種油などバイオ燃料の需要が増えています。
(3)電気
原発が再稼働せず石炭やLNGの割合が高い場合、資源価格の高騰の影響を受けやすくなります。
コスト高は、すぐには解消されないと考えられます。
企業が値上げに踏み切っているのは、こうした原材料の高騰に耐えきれなくなったことが原因です。
インフレが起こるとどうなる?
例えば5%のインフレが起こった場合、生活費が20万円から21万円に上がってしまいます。
1万円の支出以上に収入が上がらなければ、生活の負担となります。
一般的には、モノの価格が上がる=円の価値が下がるとなり、円安になる可能性もあります。
その国の経済的な困窮状況を示す「悲惨指数」はインフレ率と失業率の各上昇率を合計して算出し、10%を超えると国民の不満が高まり、20%を超えると政権が打撃を受けると言われています。
アメリカはすでに10%を超えています。
最近の世界株安の発端は、アメリカのインフレが影響しているとも考えられています。
資産運用で対策
インフレは、モノの価格が上がる=円の価値が下がる状態のため、現金よりもモノに変えた方がインフレを回避できます。
資産運用もその一つです。
対策と思われる投資方法を7つご紹介します。。
(1)金
インフレヘッジの王道は金への投資です。
価値のある資源として信用があり、金や銀、プラチナなどの貴金属は、不動産と同じくインフレに強い実物資産として買われる特徴があります。
おもな投資方法として、毎月定額で積み立てる「純金積立」、金価格に連動する上場投資信託「ETF(金)」、直に延べ棒を購入する「金地金」があります。
(2)不動産
金と同じく、インフレに強い現物資産として有力です。
物価の上昇は、不動産の賃料値上げ→不動産価値の向上となります。
値上がりした賃料収入(インカムゲイン)と値上がりした物件の売却益(キャピタルゲイン)の両方を享受できます。
世界の金融マーケットとつながりの深い都心の人気エリアへの投資がインフレヘッジの資産として特に有効と言われています。
(3)株式
インフレヘッジの代表的な資産が「株式」です。
一般的に、インフレになると物価が上昇するため、企業利益も上昇し、株価が上昇するフローとなります。
金利上昇時には、保険・銀行などの金融株や低PER(株価収益率)・低PBR(株価純資産倍率)で予想配当利回りが高いバリュー株が先行して買われやすい傾向がありました。逆にPERやPBRが高いグロース株は売られやすい傾向にあります。
ただし、必ずしも利益が増すとは限りませんので、個別企業の選定には注意が必要です。
(4)コモディティ
コモディティとは、一般的に「商品」のことです。
コモディティに投資するということは、商品先物市場で取引されている原油などのエネルギー、金などの貴金属、トウモロコシなどの穀物といった商品に投資することで、インフレと実質成長の両方から恩恵を受けます。
おもな投資方法として、「商品先物への直接投資」「投資信託」と「ETF(上場投資信託)」があります。
(5)投資信託
インフレが進行しているときは家賃や地価の上昇も期待できるため、J-REIT(不動産投資信託)が有効でしょう。
また、原油をはじめとするコモディティ価格の上昇に連動する投資信託や物価連動国債に連動した物価連動国債ファンドも、インフレリスクへのヘッジとして利用されています。
(6)債券
物価に連動して利率が変わる「個人向け国債10年変動金利」と「物価連動国債」が挙げられます。
「個人向け国債」は3種類ありますが、インフレ対策として有効なのは半年ごとに金利が見直される「10年変動金利」です。
年0.05%(税引き前)という最低金利保証があり、発行から1年が経過すれば、いつでも現金に変えられます。
「物価連動国債」は、物価動向に合わせて元本が変わる国債でインフレ連動国債とも呼ばれます。
満期まで利率は変わりませんが、元本が物価の変動に合わせて変動するため、受け取れる利息が増減する仕組みです。
(7)外貨
インフレになると、円は外貨に対し相対的に価値が下がる(=円安)ため、外貨に投資することで資産価値を維持できます。
おもな投資方法として、銀行で外貨に両替して貯金する「外貨預金」、外貨で流動的に運用する「外貨MMF」、外貨で長期に運用する「外貨建て保険」、証拠金で為替取引をおこなう「外国為替証拠金取引(FX)」があります。
まとめ
商品の総合的な値動きを示すリフィニティブ・コアコモディティーCRB指数は1月末時点で前年比46%上昇し、95年以降で最大となっています。なかでもコーヒーは騰落率+91%と激しく上昇しています。
原油などのエネルギー資源は、需要が急回復する一方、脱炭素による投資手控えやウクライナ情勢も響き供給が厳しくなると予想され、物流など供給網の乱れや労働力不足も需給を逼迫させています。
こうした背景から、あらゆる商品価格が長期的に上昇する「スーパーサイクル」に入ったとみる市場関係者は少なくありません。
インフレヘッジとしての投資方法はありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
一つの投資方法に多額の資金を投じるのではなく、ポートフォリオの一部として対策することが必要です。
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