米国の有名な相場格言の中に「セルインメイ(Sell in May)」という言葉があります。
「株は5月に売れ」という意味ですが、これには続きがあるのをご存知でしょうか?
今回は、この相場格言について考察します。
「セルメイイン」とは
「セルインメイ(Sell in May)」とは、「株は5月に売れ(株価が5月に高値をつける傾向があるため、株式を売却した方がいい)」という意味の相場格言です。
「セルインメイ」の続き
正確には「Sell in May and go away, don’t come back until St.Leger day.」で、直訳すると「5月に売ってセント・レジャー・デーまで戻ってくるな」となります。
セント・レジャー・デーとはイギリスの有名な競馬レース「セントレジャーステークス」が開催される日(毎年9月第2土曜日)のことです。
つまり「株は5月に売れ」だけでなく、「9月の第2土曜日までは市場に戻ってはいけない」と続けるのが正式となります。
この格言の発祥は古く、150年程前とも言われています。
ロンドン駐在の外国人実業家が夏季休暇を終えて帰国する前に、リスク抑制のためにとった投資行動に由来しているようです。
セルインメイはなぜ起こるのか?
米国の株式市場は、5~8月にかけて株価が下がりやすく、9月半ばから年末にかけてはハロウィン効果と呼ばれるアノマリーがあり上昇しやすいと言われています。
この原因について、いくつかの理由が重なって起こっていると考えられています。
①米国の税制度
米国では、税金の還付が2月から5月くらいまでおこなわれ、その資金は消費や投資にまわるため5月までは相場が強くなりがちです。(還付金額は、例年20~30兆円と言われています。)
②信用取引の決済
年末は、株価が上昇する場面が多く見られます。
株価が上昇しているときは、信用取引の買い残が増加しやすくなります。
信用取引とは、証券会社からお金または株券を借りて株式を売買する取引のことです。最大預けた担保の評価額の3.3倍くらいまで取引できます。
この信用取引には、買建後の半年以内に決済するというルールがあります。決済を反対売買(売却)でおこなう場合は、半年後である6月頃に集中しやすく株価が下がりやすいと言われています。
③夏季休暇
欧米では、夏季休暇を1ヶ月以上と長期にとる傾向があり、市場参加者が少なくなった市場は売買が少なくなり、株価が上昇しにくい傾向があります。
④ヘッジファンド45日ルール
ヘッジファンドが投資家から解約を受け付ける場合、以前は決算期の45日前までに申し出る契約となっていることが多いとされていました。
そのため4半期決算(3月、6月、9月、12月)の45日前である2月、5月、8月、11月に株価が下落すると言われていましたが、現在では45日前ルールは主流ではなくなり、「毎日」または「毎月」とするヘッジファンドが増え比較的自由に解約ができる状況になっています。
警戒する根拠は薄れたと言ってもいいでしょう。
⑤格言への意識
こういう格言があると、少し株価が下がっただけでも「セルインメイ」が頭をよぎり売却する投資家が多く、結果的に格言どおりの相場になってしまう。
「セルインメイ」は、米国の相場格言のためNYダウを対象としています。
日本の日経平均にも当てはまるのでしょうか?
2015年1月~2020年12月までの直近5年間の月別終値を確認してみました。
・「6月」が同年の最安値だった年:2016年
・「9月」が同年の5月より安かった年:2015年、2016年
・「12月」が同年の9月より高かった年:2015年、2016年、2017年、2019年、2020年
※2015年以外は、その年の最高値
結果、「株は5月に売れ」の格言どおりになった年は2015年、2016年でした。
5年間という短期間ではありますが、日経平均にそのまま当てはめるのは少し難しいのではないでしょうか。
しかし、2018年以外は9月から年末にかけて上昇しているため「9月の第2土曜日までは市場に戻ってはいけない=9月に戻る」の部分は当てはまるかも知れません。
まとめ
今回、検証したところ、明確に格言が当てはまるとは言えないかもしれません。
特に最近の日経平均は、以前よりNYダウと連動しにくくなっているように見られます。
ですが、日本では外国人投資家の割合が高いため、相場格言「セルインメイ」を多少なりとも心に留めておいてもいいかもしれません。
今年も相場格言のように9月から年末にかけて上昇する相場を期待したいものです。
※投資はご自身の判断でお願いします。
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