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キーワードはPBR1倍割れ 日本株は割安脱却!?

今年は、なかなか、3万円を回復しない日経平均。

人気のアメリカ市場に比べて、ずっと万年割安感が漂っていましたが、最近、少し、様子が変わってきています。

そんな中、今、「PBR」がかなり、注目されています。



今、大注目のPBRですが、なぜ重要なのかを十分に理解するために、まずは基本を押さえておきましょう。


今の株価が割高か、割安かを判断する有名な指標として、「PER(株価収益率)」「PBR(株価純資産倍率)」というものがあります。

「PER」は、収益面から株価水準を測るのに対して、「PBR」は、企業の資産価値から判断します。

PBRとは、「Price Book-value Ratio」の略で、株価を1株当たり純資産(BPS)で割って算出します。

この1株当たり純資産(BPS)は企業の解散価値を意味し、株価が1株当たり純資産(BPS)の何倍まで買われているかをみることで、割安かどうかを判断します。

一般的に、数値が高いほど割高、低いほど割安とされています。


この計算基準の「純資産」は、貸借対照表(バランスシート)のなかの「総資産」から、他人への返済が必要な「負債」を引いた残額です。


理論上にはなりますが、1倍の場合は株価と解散価値が同じ水準。

1倍を下回る場合は、株価が解散価値より低い状態です。

つまり、企業が解散した時にもらえる資産より、安い値段で株価が買えることになります。


PBR1倍割れ企業は、東証プライムとスタンダードの2つの市場で約1,800社、全体の5割強を占めると言われています。

時価総額の多い有名企業では、「トヨタ自動車」「三菱UFJフィナンシャル・グループ」「ソフトバンクグループ」などが挙げられます。


この日本の水準は、アメリカS&P500の約1割、ヨーロッパのストックス600の約2割と比較して、かなり劣っています。


PBRが低い主な原因は、手元に資金が積み上がっていくことです。

本来、企業は企業価値の向上のために、稼いだ利益を開発や設備投資、M&A(合併・買収)に振り向けます。

余剰資金は、株主に還元することで、市場での評価を高めることが必要です。


そういう対策を十分にしてこなかったことが、日本が世界に後れを取っている原因かもしれません。


2.今、大注目のPBR


(1)東京証券取引所の要請


PBR1倍割れは、株価が割安かどうかの判断材料として、よく使われてきた指標ですが、あることをきっかけに、一段と注目されるようになりました。

それは、東京証券取引所による企業への改革要請です。



取引所がこういうことをするのは、世界的にも異例なことです。

長い日本株の低迷への打開策の本気度が窺えます。


(2)企業の施策例


ですが、要請を受けた企業は、どのようにPBRや株価を上げるのでしょうか?


企業が直接、株価を動かすことはできませんが、投資家の評価を得て、株価上昇につなげる方法はあります。


基本的には、持続的に利益を伸ばすことや、留保資金を成長投資にまわすことです。

その他、投資家へのアナウンスや株主還元の具体的な方法として、①「PBR1倍超」や「時価総額」を経営方針にする、②株式分割、③増配、④自社株買いが挙げられます。


②株式分割、③増配、④自社株買いは、株主還元として投資家からの評価が得やすい施策です。


特に、④自社株買いは、PBRに大きく影響するROE(自己資本利益率)を改善して、PBRを引き上げる手段として有効です。

自社株買いをおこなった分、市場に出回っている株数が減少するため、需給が引き締まり、株価を下支えする効果があります。

計算式でみると、PBRは、ROE(自己資本利益率)とPER(株価収益率)のかけ算で求められます。

自社株買いをすると、ROEは、分母となる自己資本が圧縮され、結果的に、PBR上昇が期待できます。


自社株取得の設定金額は、2022年度に9兆円超と過去最高を記録していますが、1月下旬の東証の要請方針以降、さらに増加しています。

最近の特徴は、取得枠の規模が大きくなったことです。


例えば、「三井物産」は過去最大の3,400億円、「シチズン時計」は発行済み株式の4分の1という、大規模な金額を発表しています。


(3)株価への影響


ただ、東証の要請は義務ではないため、企業が施策を実行するのか、実行したとしても株価の好材料になり得るのか疑問視されるところもありました。

ですが、自社株買いを発表した企業の株価が急騰したことで、効果があることが証明されました。

表は、昨年末にPBRが1倍割れ、時価総額が1,000億円以上の企業の株価上昇率です。


1位の神戸製鋼所の上昇率は、かなり大きいですね。

安定した株主還元が好感され、株価は昨年末の640円位から、今は、少し落ち着いていますが、3月には年初来高値1,122円と7割も上昇しました。


2位のシチズン時計も、自社株買いの発表後に、ストップ高買い気配から始まっています。


3位の「大日本印刷」は、株主変更のニュースが好感され、すでに株価が上昇していましたが、「PBR1倍超を目指す」と宣言していた後、さらに3年間で3,000憶円の自社株買い計画を公表し、一段高しています。


表には掲載されていませんが、景気に敏感な「商社」なども低PBRで割安とみなされ、一時値上がりしました。

日本の大手商社は、アメリカの著名投資家ウォーレン・バフェット氏が投資するとことでも買われています。


このように既に市場では、PBR改善のための株主還元などが進むとの期待から、低PBR銘柄に買いが集まっています。


特に、PBR0.5倍未満の銘柄の株価上昇率は高く、投資家が低PBR銘柄の将来の改革余地に期待しているとも、とれます。


今の時期は、3月期企業の決算発表が本格化しているため、自社株買いや増配などPBR1倍割れからの脱却に向けた施策は、さらに活発化する可能性があります。


3.PBR投資の注意点


今注目されるPBR1倍割れ銘柄ですが、注意点が大きく3つあります。


①本来、低PBR銘柄には魅力がない


低PBRの主な原因は、株主から預かった資金を有効活用できず、将来の成長に期待が持てないことなどにあります。

割安ですが、投資家から評価されていないとも言えます。


そして、PBRの平均は、業種によって格差があり、成熟した業界ほど低いという傾向があります。


日本取引所グループ(JPX)によると、プライム市場の主な業種別PBR(加重平均)は、2023年1月時点で、化学1.4倍、医薬品2.0倍、鉄鋼0.6倍、機械1.5倍、小売業1.9倍、銀行業0.5倍と、かなり格差があります。


また、神戸製鋼所のように、株価急騰により、高値圏と思われても、PBRは0.47倍と低水準という場合もあります。


1倍を割っているから割安、上回っているから割高と、数字だけで決めつけるのは気を付けた方がいいですね。


②企業の実効性に疑問



さらに言えば、配当は減配や無配にすると、株主からの不満を買いやすい反面、自社株買いは取得枠の上限まで買い付ける義務はないため、必ずしも公表通りに実行されるとは限りません。


例えば、昨年5月、「ソニーグループ」が発行済み株式数の2%に相当する2,000億円を上限とした自社株買いを発表しましたが、3月末時点で4割強の約890億円の取得にとどまっています。


③株価が上がるとは限らない


自社株買いを発表しても、業績不安で株価が伸び悩むケースもあります。


例えば、「ニコン」は昨年4月に発行済み株式数の約1割に当たる300億円の自社株買いを発表し、株高によって、一時的にPBRは1倍を超えましたが、その後の半導体市況の悪化による業績懸念が強まり、株価は自社株買い発表前と同水準に戻ってしまった時期があります。


自社株買いの発表直後だけ、上昇することもあります。

株価は、上昇し続けるわけではなく、波があります。

瞬間を狙うか、長期スタンスにするか、投資スタイルを決めて、売買のタイミングを見極める必要があります。


ですが、やはりPBR1倍割れは、旬な投資材料です。

3つの注意点を過度に警戒するのではなく、こういうことがあるという程度で意識しておきましょう。


4.1倍割れ銘柄を探そう


では、1,800社もあるPBR1倍割れの銘柄から、どんな銘柄を選べばいいのでしょうか。


ポイントは、やはり、①経営方針、②株式分割、③増配、④自社株買いの4つです。


こういった施策は、通常、決算に合わせて発表されることが多く、4月~5月は、3月期企業の決算発表が集中する時期でもあります。

特に、今年は、東証の要請があったばかりですから、例年以上に、活発になることが期待されます。


(1)自社株買い実施に期待


その中で、自社株買い実施に期待するのであれば、手元資金が潤沢な「キャッシュリッチ」の企業が挙げられます。


キャッシュリッチかどうかを測る指標として、「自己資本比率」が役立ちます。

自己資本比率は、総資本における自己資本の割合で、企業の財務健全を分析する指標にもなります。

一般的には、自己資本比率が高い方が財務の健全性も高いとされます。


例えば、「マブチモーター」(東P6592)は、自己資本比率が92.0%と高い水準にあります。

車用の小型モーターの世界シェアが5割以上の企業です。

12月決算で、第1四半期の内容はあまり良くありませんでしたが、配当利回りは3.4%と高く、自社株買いの実績は豊富です。


(2)増配実施に期待


増配の実施に期待するのであれば、配当性向が低い企業もいいかもしれません。

「配当性向」は、企業が利益のうちどれくらいを株主に還元しているかを測る指標です。

高い方が利益を株主還元しているということで、良い場合もありますが、低い場合でも、利益を将来のために再投資しているかもしれませんし、増配の余地もあります。


例えば、大手リースの「三菱HCキャピタル」(8539)は、配当性向が低いわけではありませんが、日本では13銘柄しかない、20年を超えて、連続増配している企業の一つです。

業績も良く、2023年3月期 第3四半期決算短信では、純利益が前年同期比で約13%増と2桁の増益になっています。


5月9月現在の株価は712円ですから、7万2千円ほどで購入できます。

PER(株価収益率)は9.3倍、配当利回りは連続増配銘柄には珍しく4.3%と高い企業です。


(3)低PER(株価収益率)に期待


業績が良く、さらに割安感に期待するのであれば、PER(株価収益率)が1桁台の企業がいいかもしれません。

例えば、「一蔵」(東S6186)は、PERが5倍と低い水準にあります。

和装の販売、レンタル、結婚式場の運営などを行っている企業です。

すでに株価は、上がっていますが、6万円くらいで購入でき、配当利回りは3.55%、コロナ禍終了で、今後の業績拡大も期待できます。


投資する際には、過去の自社株買いの実績や開示資料などを確認したり、企業の成長を促す施策かどうか、同業他社との比較、他の指標を組み合わせたりして銘柄を選んでいきましょう。


東証は、プライム市場に上場する1倍割れ銘柄が1倍に是正された場合、同市場の時価総額が現在の約700兆円から約850兆円に増えると試算しています。


こういった東証のPBR改善要請の効果の他、昨年から続く自社株買い、欧米の金融システム不安の後退、著名投資家バフェット氏による日本株の見直し、海外投資家の4月の日本株買い越し額が5年ぶりの高水準になるなど、日本独自の好材料が相次いでいます。


海外投資家からも長らく見放されてきた日本株市場。

これらの好材料が継続するわけではありませんが、そろそろ万年割安脱却に期待してもいいのではないでしょうか。


※実際の投資は、ご自身の判断でお願いします。


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