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2023年度税制改正、変わる相続節税

前回、新NISAの改正案について、お伝えしました。

今回の「税制改正大綱」は、NISA以外にも暮らしに関わる改正が多くあります。

なかでも、相続・贈与に関する内容が目立ち、65年ぶりとなる見直しが始まりそうです。

1.税制改正のおもなポイント


(1)所得税

①NISAは2024年に恒久化、無期限化、投資枠拡大

②所得30億円超の富裕層の課税を2025年から強化

③個人投資家がスタートアップに再投資するときの上場株の売却利益を20億円まで非課税


(2)エコカー減税

環境性能割とエコカー減税は23年末まで延長


(3)不動産税制

①相続空き家の譲渡所得から3,000万円を控除する特例は2027年まで延長、適用要件を緩和

②新型コロナ対応の固定資産税の軽減措置は2022年度末で終了

③大規模な修繕工事をしたマンションの固定資産税の減額特例を創設


(4)相続税・贈与税


①暦年課税の相続税の加算期間を7年に延長

暦年課税は、年110万円までの贈与は非課税となりますが、過度な節税を避けるため死亡前の3年間分は相続財産として扱われます。

改正後2031年から、さかのぼる期間を3年から7年に延長し、延長した4年間に受けた贈与は総額100万円までは相続財産に加算されません。


2031年まで時間があるように思われますが、暦年贈与をする場合は7年さかのぼった2024年分から影響が現れます。


②相続時精算課税は年110万円の贈与まで申告不要

暦年贈与との選択制である相続時精算課税は、父母・祖父母から子・孫への贈与が合計2500万円以内であれば、贈与回数に関わらず贈与税がかからない制度です。

ただし2500万円を超える部分に一律20%が課税され、亡くなったときに贈与額合計を相続財産に加算して課税されます。


制度を利用すると、少額の贈与でも税務署への申告が必要でしたが、改正後は年110万円までは申告不要となります。


③教育資金の一括贈与の非課税1,500万円を2026年3月末まで延長


④結婚・子育て資金の一括贈与の非課税1,000万円を2025年3月末まで延長


⑤マンションの相続税評価の方法を2023年から見直し検討


2.変わる相続節税


相続税対策として生前贈与をおこなってきた人にとっては、特に「加算期間の延長」と「相続税評価方法の見直し」によって、負担が増える可能性があります。


相続が発生した場合、相続税の算定基準として「路線価」を用いることは多くありますが、それが認められない場合もあります。


2022年4月、相続したマンションを「路線価」で評価し借入と相殺して相続税0円と申告していた相続人が、国税当局から「不動産鑑定」での評価によって約3億円の追徴課税を受けたことで、その処分取り消しを訴えていましたが、最高裁判所は「税負担の軽減を意図して行ったもの」として訴えを退けました。


土地の評価として公示価格の8割の「路線価」は、一般的に使われ、実際の不動産の価格より低いため、相続税対策としてマンションなどを購入する富裕層も多いと言われています。

この判決結果や評価額の見直しの検討が始まれば、過度な節税対策に歯止めをかかりそうです。


3.まとめ


高齢者世帯が保有する預貯金の比率は、現在の約15%から10年後には約21%に拡大するとも言われています。

一方、子育てや現役世代の比率は、低下する見込みです。

現在は、後期高齢者層の金融資産を円滑にどう資産移転するかが課題となっています。


今回の改正で、相続税対策として生前贈与をおこなってきた人にとっては、負担が増える可能性がありますが、結婚や育児などで資金が必要な現役世代へ、円滑に贈与できる効果を期待します。


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