世界の金融市場で金利の上昇が広がってきました。
長期金利の指標となる10年物国債利回りが、アメリカでは2年半ぶりに2%台に乗せ、日本でも6年ぶりの水準に上昇してきています。
今後、金利が上昇を続けた場合、私たちの生活にどのような影響が出るのでしょうか。
そもそも金利ってなに?
金利とは、利息の計算レート(利率)のことで、一般的には1年あたりの利率を「%」で表示します。
お金の貸し借りをした場合は、借りた人が貸した人に、利息を支払います。
お金を預ける場合は、利息をもらいます。
1年で金利0.1%の定期預金があったとすると、100万円で年間1,000円の利息がつきます。ただし、預金や債券などは20.315%(所得税15.315%、地方税5%)が源泉徴収されます。
どうやって決まる?
金利は、1年未満の短期金利と1年以上の長期金利に分けられます。
1.短期金利
短期金利は、日本銀行が市場に供給する資金の量を調節することで決まります。
国内の代表的な指標は、金融機関の間で当日借りたお金を翌日に返済する「無担保コール翌日物」です。
2.長期金利
長期金利は、原則、国債が取引される債券市場で需給バランスによって決まります。
代表的な指標は、10年物国債の利回りです。国債の価格が上がれば金利は低下し、価格が下がれば金利は上がります。
金利が上昇する原因は?
金利は、「景気」「物価」「為替」「金融政策」「海外金利」などの要因で変動します。
1.国内景気
国内景気が好転すると、個人消費が増えます。
売り上げが伸びた企業は設備投資するために金融機関から資金を借ります。結果、借り手が多くなって金利が上昇します。
2.物価
物価が上昇する時は、好景気のときです。
収入が増えたことにより消費が増加し、物価が上昇します。
物価が上昇することは、お金の価値が下がることを意味します。
お金よりモノに価値があると考えモノを購入した結果、貯蓄という資金供給が減少することから金利が上昇します。
3.為替
円安ドル高になった場合、輸入品価格が上昇するため国内商品への消費が進み国内物価が上昇します。購入するための資金需要が増加し金利が上昇します。
4.金融政策
日本銀行が資金を借りにくくするために「金融引策」によって金利を引き上げます。
5.海外金利
例えば、アメリカの金利が上昇した場合、国内の投資家は日本の債券を売却してアメリカの債券を購入する動きが増加します。売却が増加した日本の債券価格は下落し(=金利は上昇)します。※債券は、価格と金利が逆方向に動きます。
また、海外金利が上昇すると、金利の低い日本でお金を借りて、海外で運用しようとする動きが強まります。
資金需要が高まった結果、日本の金利が上昇します。
金利上昇の影響は?
海外では金利上昇の動きが活発です。
アメリカは3月のFRB会合で、通常の利上げ幅0.25%から0.50%まで一気に利上げするとも見込まれています。
イギリスのイングランド銀行は昨年12月に続き、2月に政策金利を引き上げ、利上げに慎重だったヨーロッパ中央銀行も利上げを視野に入れる姿勢です。
世界の動向に比べ金利上昇の歩みは遅い日本ですが、実際に起こった場合は、どう影響がでるのでしょうか?
1.住宅ローン
住宅ローンは大きく3つの種類があります。
固定金利は長期金利の影響を受けやすいですが、変動金利は短期政策金利と各金融機関の影響を受けるため、長期金利が上昇したからといってすぐに金利が上昇するとは限りません。
<参考:住宅ローンの金利タイプ>
① 固定金利型
全期間において金利が固定され、借入金利は長期金利が反映されます。
② 変動金利型
定期的にローン金利が見直され、借入金利は短期金利と各金融機関の方針が反映されます。
③ 固定金利期間選択型
固定金利型と変動金利型の両方の特徴をもち、最初の一定期間を過ぎると「固定金利型」か、「変動金利型」かを選びます。
2.物価
景気回復をともなう金利上昇の場合は、消費が活発になり物価が上昇していきます。
3.金融政策
日本銀行は、消費者物価指数の上昇率(インフレ率)を年2%とし、物価安定を目標とした金融政策をおこなっています。
そのため、この数字に近づくと政策金利の引き上げも想定され、金利引き上げも想定されます。
4.国内景気
物価上昇(=インフレ)の対策として日本銀行が金利を引き上げると、人々は預貯金へ資金を回し、購買意欲がなくなり企業の売り上げ減少とともに設備投資も控えます。
金融機関の貸出金利も引き上げられ、資金を借りにくくなります。
結果、景気の過熱が抑えられ、将来的に景気後退の兆しを見せることになります。
5.為替
日本よりも海外金利が高くなった場合、円を売却し金利面で魅力的な海外通貨を購入するため、円安が進みやすくなります。
アメリカなどの先進国の利上げは、新興国にとっては輸入物価の上昇→外貨建て債務の負担増→通貨安防衛目的の利上げ→景気悪化→通貨安となります。
実際、過去のアメリカの利上げ局面では、新興国の通貨動向が不安視されました。
6.預金
預金金利は、債券の金利上昇に合わせて上昇することが想定されます。
7.株式
景気回復をともなう金利上昇は、企業業績の向上が期待され株式は値上がりします。
金利水準によっては、リスクをとって株式を購入するより債券を購入した方が有利と考えられ、株式は値下がりします。
また、借入コストの上昇により設備投資を縮小した企業業績の低迷が懸念された場合も株式は値下がりします。
資産運用での対策
前述の金利の変動要因を踏まえて、対策の一例を紹介します。
ただし、海外に投資する場合は、投資する国の情勢を事前に確認しておくことが重要です。
1.株式
過去の金利上昇時には、保険・銀行などの金融株や低PER(株価収益率)・低PBR(株価純資産倍率)で予想配当利回りが高いバリュー株が買われやすい傾向がありました。逆にPERやPBRが高いグロース株は売られやすい傾向にあります。
アメリカ10年国債の利回りが上昇した場合、円安ドル高になりやすいため、自動車株にもやや追い風となります。
2.債券
金利の上昇は、債券市場にとってはマイナス要因ですが、債券の種類は多く各国で金融政策や経済状況は違います。
格付けが投資適格に満たないが利回りの高い「ハイ・イールド債券」や「個人向け国債10年変動金利」「物価連動国債」、
金利変化に対しての感応度が低い債券(=満期までの残存期間が短い債券)への投資も合理的でしょう。
3.投資信託
同じ債券型ファンドでも、指数に連動するパッシブファンドと指数以上の運用を目指すアクティブファンドでは状況が異なります。
世界の債券市場で魅力的な投資チャンスを掴もうとするアクティブ型ファンドにとっては、金利上昇は追い風になるかも知れません。
4.外貨
日本より海外の方が高金利になると予想した場合、外貨に投資することで資産価値を維持できます。
おもな投資方法として、銀行で外貨に両替して貯金する「外貨預金」、外貨で流動的に運用する「外貨MMF」、外貨で長期に運用する「外貨建て保険」、証拠金で為替取引をおこなう「外国為替証拠金取引(FX)」があります。
まとめ
ライフプランを作成するうえで、金利動向を把握することは必要不可欠です。
金利が上昇を続けた場合、住宅ローン、物価など私たちの生活にも大きく影響します。
金利を知ることは、景気や為替などの経済情勢を知ることにもつながります。
さまざまな要因で動く金利ですが、代表的な要因や指標を知ることで流れをつかむことができます。
最近では、ウクライナ情勢の緊迫化によりリスク回避の目的で債券への投資が強まり、利回りにも大きく影響しています。
また金利上昇が継続されても慌てないように、今のうちに住宅ローンや投資のポートフォリオの見直しなどで備えておくことが必要かもしれません。
※記事は、一般的な内容です。
※実際の投資は、ご自身で判断したうえでお願いします。
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