相続後の課題は大きく4つに絞られます。
その課題に対しての対策方法の一例をまとめてみました。
対策① 遺産分割(話し合い)
1.遺言書を作成する
①自分の意志どおりの財産分割を指定することで、争族を防止できる。
※遺留分(民法が保障する最低限度の相続分)を侵害しないように注意が必要
②相続人以外の人や団体にも遺贈できる。
③自分の想いをのこせる。
※「付言事項」で大切な人へメッセージ
2.保険を契約する
①原則、受取人の固有財産(遺産分割協議の対象外)となる生命保険を契約する。
受取人を指定することで大切な人への想いをのこせる。
②他の相続人への代償分割資金として活用できる。
3.信託を契約する
一定金額の資金がすぐに受け取れる。
4.資産を組み換える
①分割しにくい不動産は、売却して現金化する。
②相続人それぞれが単独で相続できるように、複数を所有する。
対策② 相続の手続き
1.財産内容をわかりやすくする
①相続人に、財産の内容や資料の保管場所などを話しておく。
②財産目録やエンディングノーを作成する。
2.手続きの負担を軽減する
①利用していない金融機関の口座、クレジットカードを整理する。
②遺言執行者や遺産整理業務を依頼する。
3.預貯金が引き出せない場合に備える
生命保険や信託を契約する。
対策③ 納税資金の準備
1.金融資産の割合を増やす
①不動産を売却して現金化しておく。
②生命保険を契約し受取人を指定しておく。
2.相続人の金融資産を増やす
定期収入がある財産(配当金や家賃など)がある場合は生前贈与する。
※値上がりが見込める財産は「相続時精算課税制度」を利用する方法もある。
3.相続人に金融資産を配分する
不動産や自社株は、金融資産と同時に相続する。
対策④ 相続税の軽減
1.生前贈与を活用する
①暦年課税制度の基礎控除額(年間110万円)を利用する。
②相続時精算課税制度2,500万円を利用する。
(贈与時の贈与税を相続時に相続税として精算)
③特例制度の非課税枠を利用する。※一定要件あり
・「教育資金の一括贈与」
(30歳未満の子供か孫への教育資金、最大1,500万円)
・「結婚子育て資金の一括贈与」
(20歳以上50歳未満の子供か孫への結婚子育て資金、最大1,000万円)
・「住宅取得等資金贈与」
(20歳以上の子供か孫への自己居住用住宅の購入資金、最大1,500万円)
④生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)を利用する。
<生前贈与の主な注意点>
・金額は、贈与税と相続税の負担率を比較して検討する必要がある
・受贈者(贈与を受ける側)が贈与を認識する必要がある
・3年以内の贈与は相続税の課税対象となる(「教育資金の一括贈与」は対象外)
・1年ごとの贈与とみなされない場合(定期贈与)は贈与税が課せられる場合がある
・法定相続人以外への贈与は、相続税が2割加算される場合がある
・2021年度の税制改正大綱では「相続税と贈与税の一本化」について触れている
2.相続税評価を圧縮する
①不動産の相続税評価価額の圧縮効果を活用する。
・更地に賃貸用建物を建築する
・収益用不動産を購入する
②生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)を利用する。
3.財産の分割方法を工夫する
①「配偶者の税額の軽減制度」を活用する。
配偶者が相続した課税対象の遺産の額から一定金額を控除
控除額:1億6,000万円または配偶者の法定相続分のいずれか多い金額
②「小規模宅地等の特例」を活用する。
生活や事業継承に必要な宅地などの評価を一定額減額
減額分:最大730㎡の部分まで80%減額
まとめ
対策方法は「遺言書」「信託」「保険」「生前贈与」「資産運用」「ローン」「不動産」など、さまざまです。
それぞれのご家庭で課題は違いますし、各制度を利用するにしても要件もありますし最適な対策を講じるのは難しいことです。
ですが、苦労して対策したことは皆さんの想いとして、きっと大切なご家族に伝わることでしょう。
※上記は、2021年7月現在の税制にもとづいた一般的な対策方法の一例です。
必ずしも効果を保障するものものではありません。
対策を実行する際は、内容や税制に注意して十分な比較検討をお願いします。
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