岸田文雄首相は、5月5日のイギリス金融街シティーでの講演で、NISA(少額投資非課税制度)の拡充などにより貯蓄から投資を進め、資産所得を倍増する考えを示しました。
投資信託や株式への投資を促す政策とも言えます。
資産所得の倍増とは?
資産所得とは労働で得た給料とは違い、株式の売買や配当などで得た所得のことです。
家計の金融資産の増加率は、この10年間で日本1.4倍(約2,000兆円)にとどまったのに対し、アメリカは3倍(約1京2,900兆円)になっています。
これは、家計の金融資産のうち株式や投資信託が5割を占め株高の恩恵を受けたアメリカと、現預金が5割を占め超低金利の影響を受けた日本の構成の違いが一因です。
首相は、NISA(少額投資非課税制度)の拡充や現預金を資産運用に回す新たな仕組みを作るなど家計の現預金を投資に誘導し、運用から得られる利益で所得を増やす考えのようです。
株式投資の魅力
株式投資の魅力は、おもに3つです。
(1)譲渡(売却)益
購入したときより高い値段で売却すると、譲渡(売却)益が得られます。
(2)配当金
会社が得た利益を株主に還元する「配当金」が受け取れます。
日経平均の予想配当利回り(平均)は、5月6日現在で2.34%です。
例:日本郵船12.2%、JT6.52%
ただし、配当金は会社の判断で支払われることから、期待通りの配当金が受け取れない場合があります。
(3)優待
会社の製品やサービスなどの優待を受けられる場合があります。
例:イオン(イオンシネマ・買物キャッシュバックなど)、オリックス(カタログなど)
株式投資のリスク
株式投資のリスクは、おもに2つです。
(1)価格変動リスク
売却時の受取金額が当初支払った金額より下回る場合があります。
(2)信用リスク
投資した会社が破たんする可能性があります。
外国株式の場合は、さらに2つのリスクがあります。
(1)為替変動リスク
売却時(換金時)に為替レートの変動により為替差損が生じる可能性があります。
(2)カントリーリスク
発行体の所在する国・地域の政治・経済環境により価格変動などが発生する可能性があります。
リスクの対応方法
これらのリスクに対応するためには、おもに以下の投資方法があります。
(1)ドル・コスト平均法
一度に買わず何度かに分けて購入(積立)
(2)分散投資
複数の会社や業種に分散して購入
(3)長期運用
短期的ではなく長期的な成長に期待
株式は少額から投資できる
しかし、いざ株式を購入しようとしても売買の最低単位である単元株数(100株単位)が決まっているため最低購入金額が数十万もする銘柄などもあり、躊躇するかもしれません。
そんなときは、「単元未満株」の購入を検討してみてはいかがでしょうか。
通常、株式の取引は単元単位(1単元=100株)でしかおこなえませんが、「単元未満株」は、単元未満での購入が可能なため少額で投資できます。
少額から投資できるという魅力に加え、値下がりのリスクを軽減するための銘柄分散や時間分散にも威力を発揮します。
単元未満株の取引方法
単元未満株の取引方法は、大きく分けて2種類あります。
(1)株式ミニ投資
1単元の1/10単位での株式売買が可能、つまり通常の取引の1/10の資金で投資できる方法です。
例えば、通常の購入に100万円を必要とする企業の場合、株式ミニ投資では10万円で購入できます。
少額で投資できるため、複数の銘柄を組み合わせた銘柄分散や、何回かに分けて購入する時間分散など、リスクを低減することができます。
(2)株式累積投資(るいとう)
積み立て貯蓄と同じように毎月一定額を積み立てていく投資方法です。
大手証券では1万円以上1,000円単位で購入金額を設定でき、1株に満たなくても購入できるのが特徴です。
例えば株価が5万円の企業の場合、購入金額が月1万円であれば約0.2株を買い付けます。株価が下がったときは購入株数が多くなる「ドル・コスト平均法」で積み立てるため、平均購入単価を抑えることができます。
資金的に株式ミニ投資が無理な場合などに向いています。
少額投資(単位未満株)の注意点
少額から手軽に株式投資をはじめられる株式累積投資(るいとう)や株式ミニ投資ですが、以下のような点が通常の株式投資と異なるため、注意が必要です。
詳細は、取引証券会社で確認をお願いします。
(1)サービス
・全ての証券会社で利用できるわけではありません。
・NISAでは売買できない証券会社もあります。
(2)権利
・単位未満株は証券会社名義のため、議決権や株主優待を受ける権利がありません。
※売買単位(100株)に達すると、投資家の名義となり、権利が得られます。
※三菱マテリアルや京セラなど1株でも優待対象になる企業もあります。
・配当は、現金では受け取れず自動的に株に再投資されます。
(3)取引
・約定価格は所定条件によって決まっているため、指値注文ができません。
・銘柄や金額など取引に制約が多くなっています。
まとめ
単元未満株は、通常の取引より必要資金が少なく、積立や複数の会社へ投資することでリスクを抑えることができます。
NISA(少額投資非課税制度)の非課税枠が数万円残っているときに使い切るのも便利です。
初心者には株式投資の入り口として利用しやすいかもしれません。
しかし注意点もあります。
単元未満株のサービスは、すべての証券会社が用意しておらず、NISA口座で売買できない場合もあります。
実際の取引には制約が多く、事前に取扱証券会社での確認が必要です。
ですが「貯蓄から投資へ」の傾向がますます強くなっていくなか、投資のきっかけとして検討してみるのもいいかもしれません。
※実際のご利用は、ご自身の責任と判断でお願いします。
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