株主還元で資産運用

企業が株主に還元する方法はいくつかあります。

なかでも「優待」や「配当」は購入するときの指標としている個人投資家も多いことでしょう。

ですが、今年の株主還元の傾向にはある変化が見られます。

そもそも株主還元とは?

株主還元とは、会社が営業活動によって獲得した利益を株主に還元することを言います。

還元方法は大きく4つあります。


1.配当金(増配)

企業が株主に利益の一部を分配金として還元します。増益時や創立記念時などに通常より増やす場合もあります。

連続して配当を増やしている企業は利益が安定していると注目され、花王、リコーリース、SPK、三菱HCキャピタル、小林製薬、KDDIなどがあります。


2.株主優待

企業が株主に自社製品や商品などをプレゼントします。上場企業の約4割が実施しています。

おもな企業は、日本マクドナルド、JT、すかいらーく、オリックス、イオン、KDDIなどです。


3.株式分割

資本金を変えずに株式を1株から複数株に分割し、株式の流通量を増加します。

最近発表した企業は、カンロ、コーアツ工業、ノジマ、ノムラシステムコーポレーション、セルムなどです。


4.自社株買い

企業が自社の株を買い戻し、市場での流通量を減らします。

買い戻した株を消却する場合は、会社の発行済み株式総数が減少しEPS(一株あたりの当期純利益)の増加により株式の価値が上昇します。


最近の株主還元の変化

2022年になって、いくつかの変化が見られます。


1.株主優待の廃止


(1)理由

①株主への公平な利益還元

優待の恩恵を受けられない海外投資家からは「不平等」との声が挙がっていたため、今後は自社株買いや配当による利益還元にシフトする方針です。

②上場基準となる株主数の緩和

2022年4月の東証の市場再編によって東証1部(必要株主数2,200人以上)に代わってプライム市場(必要株主数800人以上)が誕生し、上場基準が緩和されたため株主優待で個人株主を確保する必要性が薄れました。


(2)企業例

①オリックス

・内容:株主カード提示による割引・カタログギフト(カードの有効期限は2025年7月31日まで)

・最終:2024年3月31日現在の株主への発送分

②JT(日本たばこ産業)

・内容:食品詰め合わせ

・最終:2022年12月31日現在で1年以上継続保有する株主様をへの発送分


2.自社株買いの増加

今年4~5月に設定された自社株買い枠の総額は16年ぶりの高水準となりました。


(1)理由

新型コロナウイルスによって落ち込んでいた業績が回復に向かい、株主に還元する動きが出てきています。

自社株買いをおこなうことで株式の価値が上昇し株価にとっては好材料になり、余裕資金を充てることで資本効率を改善する狙いもあります。


(2)企業例

・日立製作所(上限2,000億円)

・三菱UFJフィナンシャル・グループ(上限3,000億円)

・三井物産(上限1,000億円)

・ヤマダホールディングス(上限1,000億円)

・HOYA(上限600億円)

・東京海上ホールディングス(上限500億円)


3.配当の増加

配当による株主への利益還元を充実させる企業が増え、2023年3月期の配当総額は過去最高を更新する見通しです。

年間配当金の株価に対する比率を示す「配当利回り」は、購入の指標としている投資家も多く、一般的に配当利回り3%以上を「高配当株」といいます。


(1)理由

新型コロナウイルスによって落ち込んでいた業績が回復に向かい、株主に還元する動きが出てきています。

(2)高配当の企業例※7月1日現在

・日本郵船(11.55%)

・商船三井(11.43%)

・日本製鉄( 8.42%)

・西松建設( 7.18%)

・JT    ( 6.54%)

・岩井コスモホールディングス( 6.44%)


株価との連動性

5月下旬においては、株主還元を発表すると、業績への自信や株価の割安感から株価が上昇するケースが多くありました

4~5月に自社株買いを発表した企業の株価は、発表の翌営業日に上昇しています。

特に取得予定株数の上限が発行済株式総数に対する割合が大きい企業ほど、大きく上昇する傾向がありました。


しかし、6月下旬においては株価がさえない企業も多くなっています。

4~5月に増配や自社株買いを発表した企業の株価は、明暗が分かれます。

日経平均株価との相対騰落率をみると、高いのは日立製作所、セイコーホールディングスなどで、低調なのはベネッセホールディングスなどです。

発表した企業の45%が日経平均を下回っています。


評価を分けているのは、株主還元をする理由が「株主還元」か「成長戦略」かどうかだと指摘する声があります。

「株主還元」を理由とした企業は株高が持続しなかったのに対し、「企業価値」や「資本効率」「経営計画」などを理由にした企業の株価は上昇基調が続いたとのことです。

戦略性の薄い株主還元は、評価を得にくくなっているのかも知れません。


いずれにしても、最終的には、その企業に対する総合評価が株価に反映されるのは言うまでもありません。


まとめ

企業がおこなう株主還元は、株主にとっては本来有益なものです。

ですが、国内外投資家に対する不公平感是正や市場再編による上場基準の変化により、そのかたちは変化しています。


優待や配当を目当てに購入しても廃止や減配になったり、自社株買いを発表しても株価がさえなかったり、思惑とは異なる場合があります。

購入する際には、業績はもちろんのこと、単なる株主還元ではないか、過去の株価はどうだったかなどを事前に調べることが必要でしょう。


※実際の投資は、ご自身の判断でお願いします。