年金・iDeCo改正と活用術

2022年4月から2024年10月にかけて、年金の改正法が立て続けに施行されます。

年金の改正にともない、老後資金づくりに有効とされる「iDeCoイデコ(個人型確定拠出年金)」も改正となります。

今回は年金制度改正のポイントや活用方法についてまとめました。

おもな年金制度の施行時期


◆2022年4月

※年金手帳の新規発行の廃止

・繰り下げ受給の上限年齢の延長:70歳→75歳

・繰り下げ受給の減少率の緩和:0.5%→0.4%

・在職老齢年金の減額基準の緩和:28万円→47万円

・「在職定時改定」の導入:65歳以上で働きながら年金を受給すると、毎年もらう厚生年金額が増加

・iDeCoイデコの受給の上限年齢の延長:70歳→75歳

・企業型DC(企業型確定拠出年金)の受給開始上限年齢の延長:70歳→75歳


◆2022年5月

・イデコの加入上限年齢の延長:60歳未満→65歳未満

・企業型DCの加入上限年齢の延長:65歳未満→70歳未満

・企業型DCの加入制限の緩和:60歳以降の転職時など


◆2022年10月

・短時間労働者(パートなど)の厚生年金加入条件の緩和:①勤務期間1年以上→2ヶ月超②勤務先の従業員数501人以上→101人以上※労働時間(週20時間以上)、賃金(月8万8千円以上)はそのまま

・企業型DCのイデコへの加入要件の緩和:規約など必要→規約など不要


◆2024年10月

・短時間労働者(パートなど)の厚生年金加入条件の緩和:勤務先の従業員数101人以上→51人以上


◆2024年12月

・DB(確定給付企業年金)導入会社の多くでイデコや企業型DCの掛金上限が拡大


年金繰り下げのメリット・デメリット


今回の改正の最大のポイントは、「受給開始年齢の繰り下げ延長」と言えます。

年金を受け取る年齢は65歳を原則としていますが、希望すれば60歳から70歳の間で選ぶことができました。

今回の改正では選択肢が75歳まで延長されました。


◆メリット


1.75歳繰り下げで、受給額84%増


年金の受給開始は原則65歳(年780,900円)ですが、1カ月遅らせるごとに0.7%増えます

開始時期を年齢別で計算すると70歳で42%増(年1,108,878円)、75歳で84%増(1,436,856円)となり、その額が一生涯続きます。


2.老齢厚生年金もダブルで増額


会社員や公務員がもらう老齢厚生年金は、老齢基礎年金と別々に繰り下げられるため、両方とも繰り下げを選択するとダブルで増額されます。


◆デメリット


1.繰り下げ期間中の死亡


繰り下げた期間中に受給者が亡くなってしまった場合、総受給額が減ることになります。

受給開始年齢別の損益分岐点を計算すると、70歳で81歳11か月、75歳で85歳超と、およそ11年超が損得の分かれ目となるようです。

※計算は額面ベース 

※2020年時点の平均寿命:男性81.64歳、女性87.74歳


2.税金・社会保険料などの負担


増額によって税金や社会保険料、医療費といった負担も重くなります。

額面での増額分ほど手取り額は増えない可能性があります。


3.加給年金


厚生年金に20年以上加入し、65歳時に生計を一にする配偶者や子供がいる場合に加算される年金です。

受給を遅らせた場合、その期間の加給年金も受け取れなります。


年金繰り上げのメリット・デメリット


◆メリット


年金を早く受け取れる

65歳まで働くのが厳しい場合や預貯金などの貯えがなければ、たとえ受給額が減ったとしても収入の確保ができます。


◆デメリット


1.60歳繰り上げで、受給額24%減


年金の受給開始は原則65歳(年780,900円)ですが、1カ月早めるごとに0.4%減少します。

開始時期を年齢別で計算すると60歳で24%減(年593,484円)となり、その額が一生涯続きます。


2.老齢年金以外の年金との兼ね合い


・加給年金(※)は、繰り上げ対象にならない

 ※65歳時に生計を一にする配偶者や子供がいる場合に加算される年金

・事後重症による障害年金が請求できなくなる

・寡婦年金(※)が請求できなくなる

※夫が年金受給の前に亡くなった場合に妻が60歳から65歳までの間に受給できる年金

・65歳前で遺族厚生年金の受給権が発生した場合、65歳までは老齢年金との選択

など


加入状況の確認方法


1.書類(手元に書類がある場合)


・ねんきん定期便(誕生日月あたりに届く)

・年金請求書(年金がもらえる年齢の約3か月前に届く)


2.インターネット(ねんきんネット)


・日本年金機構のサイトで、一度登録すればパソコンやスマホからいつでも確認可能

 登録方法① マイナポータルとの連携(マイナンバーカードを持っている人)

 登録方法② ユーザーIDの取得(マイナンバーカードを持っていない人)


3.電話(ねんきんダイヤル)


・一般的な年金相談 0570-05-1165(ナビダイヤル)

・年金定期便・ねんきんネット等専用0570-058-555(ナビダイヤル)


4.年金事務所の窓口


・基礎年金番号、マイナンバー、本人確認書類などが必要

・予約受付専用電話(0570-05-4890)

※家族が代理の場合は、日本年金機構のホームページから入手する委任状と代理者の本人確認書類が必要

※年金事務所で「年金加入記録照会票」をもらい記入提出し、後日郵送される「年金加入期間照会回答票」でも確認可能


働きながら年金を増やす方法


今回の改正で、年金の繰り下げ以外にも働きながら年金を増やす方法があります。


1.iDeCoイデコで節税効果


現在の加入年齢は60歳未満までですが、5月以降は65歳未満まで延長されます。

また、4月から受給の上限年齢も75歳まで延長されました。

iDeCoイデコ(個人型確定拠出年金)は、自分で掛け金を出し、投資信託や預金などを選んで運用する私的年金制度です。最大の強みは、税優遇が手厚いことです。

加入や受給期間が延長された分、長く運用することが可能になります。


2.定年後も働く


4月から「在職定時改定」が導入され、65歳以降も厚生年金に入って働き続けた場合、在職中も年1回年金額が見直され毎年それまでに払った分の金額が上乗せされます。

また、在職老齢年金の減額基準が緩和されたことにより、年金と給与で月47万円まで年金をカットされなくなりました。


3.パートも厚生年金を受け取れる


10月から、パートやアルバイトといった「短時間労働者」への厚生年金の適用条件が緩和され、加入しやすくなります。

目先の手取り額は保険料分減少しますが、生涯受け取る年金額を増やすことは老後の安心につながります。


まとめ


今回の改正の大きなポイントは、①受給受給年齢の繰り上げ、繰り下げ、②短時間労働者への厚生年金の適用拡大、③在職老齢年金の減額基準の引き下げです。


なかでも年金の繰り上げ繰り下げの選択を悩ますのは、「寿命」「資産」です。

受給開始年齢の損益分岐の額面での計算はできますが、いつから年金を受け取るかは、寿命や資産状況、働きかたや健康状態によって異なります。

資産に余力があり、長生きに自信がある人は繰り下げを選んだ方が得策でしょう。

しかし、繰り下げや労働が年金額を増やすといっても、無理をして健康を損なっては元も子もありません。


仮に世帯の年金収入を月20万円とした場合、定年後20年で総額4,800万円、30年で7,200万円と大きな金額になります。


制度を理解して、60代以降にどう働くか、リタイア後にどう生活するかを現役時代から考えておくことが重要です。


※実際のご利用は、ご自身の責任と判断でお願いします。