すべての国民が加入する基礎年金(国民年金)の給付抑制策「マクロ経済スライド」を止める検討が始まりました。
厚生労働省の試算では、給付が減額となる会社員は一部の高所得者に限られるそうですが、給付の財源については危ぶまれる声もあります。
加えて、私たちの暮らし、特に社会保障関係の制度が大きく変わった10月。
今回は、おもに扶養の範囲内で働く方々の今後の働き方について、お伝えします。
10月から変わった制度
まずは、10月から変わった制度について、おもな内容を紹介します。
1.高所得世帯の「児童手当」廃止
お子さんがいる場合、中学校卒業まで年齢に応じて受給できる「児童手当」は、支給対象が絞られます。
今までは所得制限限度額を超えても「特例給付」月額5,000円が支給されていましたが、今回の制度改正によって、条件によっては支給されなくなります。
※所得上限限度額は、扶養親族等の人数によって異なります
例)会社員年収1,300万円、配偶者(年収103万円以下)、子ども2人
変更前:支給あり(特例給付月額5,000円)
変更後:支給なし
2.雇用保険料の値上げ(会社員)
雇用保険加入者が毎月の給与から差し引かれる「雇用保険料」は、値上がりします。
値上がりする率は業種によって異なり、手取りに影響する負担率は、以下のように変更されます。
例)業種による雇用保険料の値上げ
一般事業:0.3% ⇒ 0.5%
建設事業:0.4% ⇒ 0.6%
計算例)一般事業に勤務、手取り給与20万円の場合の雇用保険料
変更前:20万円×0.3%=600円
変更後:20万円×0.5%=1000円
+400円負担増
3.「在職定時改定」の年金額への反映(会社員)
「在職定時改定」とは、65歳以上70歳未満の働いている方のうち、厚生年金保険料を納めながら老齢厚生年金も受給している方の老齢厚生年金額を、毎年10月に改定する制度のことです。
一定時期にしか反映されなかった納付済み厚生年金保険料は、毎年10月に反映され、老齢厚生年金額が増えることになります。
※65歳未満で繰り上げ受給を選択されている方は「在職定時改定」の対象者外
働く高齢者にとっては、生活費の安定とともに働くモチベーションにもつながります。
65歳以降に払い込んだ厚生年金保険料が老齢厚生年金に反映される時期
変更前:退職または70歳到達以降
変更後:毎年10月分(前年9月から当年8月までの厚生年金保険料が反映、支給は12月)
※2022年10月分の老齢厚生年金額の上乗せは、65歳に到達した月から2022年8月までの厚生年金被保険者期間分
4.企業型DCのiDeCo同時加入(会社員)
「企業型確定拠出年金(=企業型DC)」加入者の多くが加入できなかった「個人型確定拠出年金(=iDeCo)」は、会社の規約変更なしで併用が可能になりました。
運用状況によって将来の受給額が変わる「確定拠出年金(=DC)」には、掛金を自分で出す「個人型確定拠出年金(=iDeCo)」と、会社が出す「企業型確定拠出年金(=企業型DC)」があります。
「iDeCo」の節税効果は大きく、掛金、運用益、受取金に、一定の非課税や控除がありますが、「企業型DC」を導入している企業に勤務している場合は会社が規約変更しなければ併用できませんでした。
しかし、今後は規約変更なしで併用が可能になるため、資産の積み上げ効果も高まります。
◆参考
iDeCoの掛金上限月額(会社員・公務員)
・会社に企業年金がない:23,000円
・企業型DCのみ:20,000円
・企業型DB+企業型DC:12,000円
・企業型DBのみ:12,000円
「企業型DC」=企業型確定拠出年金・・・掛金の支払いは会社、運用は従業員、給付額は運用成果で変動
「iDeCo(イデコ)」=個人型確定拠出年金・・・掛金の支払いも運用も加入者、給付額は運用成果で変動
「企業型DB」=確定給付企業年金・・・掛金の支払も運用も会社、給付額はあらかじめ固定
5.パート・アルバイトの社会保険適用の拡大
今まで社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できなかった方も加入できるようになります。
以下「参考」の下線部が変更点です。
◆参考
社会保険の適用条件
・週の所定労働時間:20時間以上
・賃金月額:88,000円以上
※時間外労働手当、休日・深夜手当 、賞与や業績給、慶弔見舞金など臨時に支払われる賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは、含まれにあ
・雇用期間:1年以上⇒2ヵ月を超えることが見込まれる
・勤務先の従業員数:501人以上⇒101人以上(厚生年金の被保険者数)
※100人以下でも「労使合意」をしている任意特定適用事業所に勤務していること
・学業を主とする学生(昼間学校に通う学生)でないこと
「パート収入の壁」は6つ
社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できるようになったとはいえ、配偶者の扶養の範囲については、「パート収入の壁」と呼ばれるものが6つあります。
6つの壁は、「税金の壁」と「社会保険の壁」に大別されます。
注意すべきは、「税金の壁」よりも、「106万円」と「130万円」の「社会保険の壁」でしょう。
税金は収入に応じて段階的に課税されるため負担が比較的小さいですが、社会保険料は壁を越えたとたんに手取り額が大きく減少し負担が増すためです。
内容を確認して、今後どのように働いていくかを検討してみましょう。
1.100万円の壁(税金)
100万円前後になると、住民税が課税されます。
地域によって課税額は異なりますが、年間5,000円前後の定額(均等割)と、100万円超過分に10%(所得割)程度を合計した金額になります。
2.103万円の壁(税金)
103万円を超えると、住民税に加えて、103万円の超過分に所得税が課税されます。
課税所得が195万円以下の税率は5%となり、1万円あたりの税額は500円程度になります。
3.106万円の壁(社会保険)
一定の条件に該当すると、勤務先の社会保険への加入義務が発生し、自分で保険料を払うことになります。
夫の社会保険の扶養から外れるため、夫の勤務先で変更手続きが必要になります。
10月の改正で条件が緩和され加入対象者が広がっています。
4.130万円の壁(社会保険)
年収106万円の要件に当てはまらなかった人も、夫の社会保険の扶養を外れ、勤務先の社会保険への加入か、国民健康保険や国民年金に加入(勤務先の加入条件に該当しない場合)することになります。
※60歳以上の年収要件は180万円以上
※夫の年収が260万円未満の場合、妻の年収が130万円未満でも扶養から外れることがあります
5.150万円の壁(税金)
夫の「配偶者特別控除」を受けられる金額が、段階的に少なくなります。
※夫の給与収入が1,095万円までは、配偶者特別控除38万円を満額受けることができますが、1,095万円を超えると妻の収入の多寡に関係なく段階的に減少し、1,195万円を超えると受けられなくなります。
6.201万円の壁(税金)
夫の「配偶者特別控除」が受けられなくなります。
配偶者だけでなく、納税者(夫)にも所得制限があります。
※150万円の壁と同様、夫の給与収入が1,095万円までは、配偶者特別控除38万円を満額受けることができますが、1,095万円を超えると妻の収入の多寡に関係なく段階的に減少し、1,195万円を超えると受けられなくなります。
1.メリット
(1)将来もらえる年金額が増える
(2)病気やけがによる障害状態となったとき、「障害基礎年金」の他に、「障害厚生年金」が支給される
(3)亡くなったとき、遺族に「遺族基礎年金」の他に、「遺族厚生年金」が支給される
(4)病気やけが、出産などで休業するとき、「傷病手当金」や「出産手当金」などが支給される(賃金の3分の2相当)
(5)会社が保険料の半額を負担してくれる
※参考:政府広報オンラインHP
2.デメリット
①給料の手取額が少なくなる
②収入によっては、世帯の手取り額が下がる
③配偶者手当が受けられない可能性がある
まとめ
10月から、年金などの社会保険制度が変更になり、私たちの暮らしや働き方にも影響を及ぼします。
なかでも、社会保険の適用範囲は、再来年さらに拡大するため、パートをしている妻は今後も選択を迫られるでしょう。
社会保険に加入すると年収が増えても、税金の負担が増えたり夫の扶養から外れたりと、一般的には103万円~150万円の年収だと世帯の手取額が少なくなると言われています。
ですが「手厚い保障が得られる」「自分の将来の年金が増える」などのメリットもあります。
また、収入も大切ですが、キャリアアップとして責任ある仕事にチャレンジするのもいいかも知れません。
目先の収入を重視するか、将来の収入を重視するかは、それぞれのご家庭に合った働き方を見つけていきましょう。
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