債券は、低リスク資産の代表的な存在ですが、気を付けて投資しないと、落とし穴にはまってしまいます。
1.債券投資の基本
(1)債券とは
債券とは、国や企業などが、投資家から資金を借りるために発行する有価証券、
証文のようなものです。
債券を購入すると、定期的な利子の受け取りや、売却して利益を得ることができます。
また、安い価格で購入できれば、償還差益として受け取れることもあります。
債券には、債券を発行する発行体や、満期の期間、利子の支払方法、通貨などによって、さまざまな種類があります。
個人投資家が債券投資をするためには、大きく分けて、
・国が発行する「国債」
・地方自治体が発行する「地方債」
・民間企業が発行する「社債」
・海外政府や企業が発行する「外国債券」
などがあります。
その他、いろいろな債券を対象にして運用する、投資信託(ファンド)を買うという方法もあります。
(2)金利上昇で注目される債券投資
債券の金利は、コロナショック後、世界的に低金利でした。
しかし、最近は大幅な利上げを繰り返しているアメリカの国債の利回りが急上昇し、注目されています。
日本の国債も、日銀の金利の上限引き上げによって、その影響が少しずつ出てきています。
4月の金利水準は、アメリカ10年国債が市場で約3.3%前後、日本の個人向け国債変動10年が0.30%となっています。
日本の金利は、アメリカに比べると、まだまだ低いですが、為替に影響されず、銀行預金よりは高くなっています。
この水準であれば、少なからず選択肢の一つとなります。
急上昇してきたアメリカの金利は、今年に入ってから、利上げ幅が縮小しつつあります。
債券価格は、金利が上がれば下がり、金利が下がれば上がります。
債券価格と金利は、逆の動きをします。
仮に、アメリカ国債を購入し、将来、利下げに転じることになったとします。
その場合は、高い利子を受け取りながら、値上がり益も受け取れることも、期待できるかも知れません。
国債の金利上昇にともない、企業が発行する「社債」の金利も上昇しています。
1月に、楽天グループ発行の「楽天モバイル債」が、2年で税引き前3.3%、という高い金利の社債を発行し、話題となりました。
カゴメのように、ジュースなどの優待が付いているものもあり、社債の発行の形態は多様化してきています。
2.個人向け国債とは
次に、「個人向け国債」の基本を押さえておきましょう。
(1)国債の種類
「国債」とは、国が発行し、利子や元本の支払(償還)をおこなう債券です。
一部の国債を除き、利子は半年に一回支払われ、元本は満期時に償還されます。
日本の財政状況が悪化により、債務不履行(デフォルト)となるリスクがゼロではありません。
しかし、可能性はかなり低いと言われているため、比較的安全性が高い投資先でしょう。
国債には、いくつか種類があります。
利子が固定している「固定利付型」と、利子が変動する「変動利付型」。
「変動利付型」には、利子は固定ですが、元本が変動する、満期10年の「物価連動国債」というのもあります。
また、途中の利払いはなく、額面を下回る価格で発行され、満期時に額面金額で償還される「割引国債」もあります。
(2)個人向け国債とは
ネットで「国債」と検索すると、「個人向け国債」の他に、「新窓販国債」も出てくると思います。
購入単位や金利の決定条件など、違いはいくつかありますが、大きな点は、購入対象者が違うことです。
「個人向け国債」は個人に限定されていますが、「新窓販国債」は制限がなく、個人に加え、法人やマンションの管理組合なども購入できます。
ただし、中途換金した場合、売却損が出る可能性があるため、今回は「個人向け国債」に絞って、お話を進めていきます。
「個人向け国債」は、個人が国債を購入しやすいように導入された商品です。
購入は1万円単位、金利は、年率0.05%の最低保証、中途換金は国の買い取り制度によって1年待てば元本割れすることなくできます。
商品のタイプは3種類あります。
半年毎に適用利率が変動する10年満期の「変動10年」、 発行時に設定された利率が満期まで変動しない満期5年の「固定5年」と、満期3年の「固定3年」です。
発行は毎月で、募集期間内に申し込むことで購入できます。
その都度、利率、償還日や利払い日が異なります。
左から「変動10年」「固定5年」「固定3年」になります。
各商品の下に「回号」があります。
これは、同じタイプであっても、ひとつひとつ違います。
仮に、購入した国債の発行条件がわからなくなっても、この回号がわかれば、検索して知ることができます。
銀行の1年定期預金の金利に対して、どのタイプも上回ってますね。
満期日が決まっているため、ライフイベントに合わせて、計画的に購入しやすのは魅力的です。
なかでも「変動10年」がおススメです。
その理由は、大きく2つあります。
1つは、実勢金利に合わせて、利率が半年ごとに見直されること。
急激な物価高で、世界各国が利上げをおこなっているなか、日本は未だ低金利政策を維持していますが、今後インフレを織り込んで金融政策の修正をするとなれば、金利が上昇すると考えられます。
購入後に金利が上昇すれば、保有している国債の利子が増えます。
逆に、金利が下がったとしても、最低金利0.05%は保証されています。
こういった金利上昇の恩恵は、金利が固定されている「固定3年・5年」では、受けられません。
もう一つの理由は、利率の高さです。
満期の期間が異なりますが、単純に比較した場合、変動10年は他のタイプより金利が高いため、1回で受け取れる利子が多く受け取れます。
ただし、上昇余地がないほど金利が上昇し、下降する可能性がある場合は、金利が固定されている固定3年、5年の方が有利になります。
利子や中途換金を、具体的に知りたい場合は、財務省のサイトでシミュレーションができます。
ご参考にしてみてください。
▼財務省HP「個人向け国債お試しシミュレーション」
3.国内債券型投信とは
「投資信託」とは、投資家から集めたお金を運用のプロであるファンドマネージャーが複数の資産に投資する金融商品のことです。
元本は保証されていませんが、固定金利の商品にはないリターンが期待できます。
投資する資産や国などによってタイプがわかれ、日本の社債や国債などの債券を中心に運用するものを「国内債券型投資信託」と言います。
基本的に、「株式型投資信託」よりも値動きの緩やかな傾向があり、リスクを相対的に抑えやすいという特徴を持っています。
とはいえ、さまざまな種類がありますから、実際の運用成績は個別の商品によって異なります。
また、複数の債券に投資できますから、分散効果によって、よりリスクを抑えることができます。
ですが、元本保証ではないこと、購入時や運用中に費用が掛かる点はデメリットです。
4.今、購入するなら
このように国内債券に投資しようとしたとき、投資信託か、個人向け国債そのものか。
どちらを選択するか、ご相談を受けることもあります。
現在の市況から、どちらかにするならば「個人向け国債の変動10年」の方が有利ではないでしょうか。
その理由は、投資信託の運用実績と、現在の金利状況にあります。
まず、投資信託の運用実績から確認してみましょう。
表は、日本の国債の組入れ比率が高く、かつ、純資産額が大きい国内債券型投資信託3商品の実績です。
計算基準は、4月7日現在で、購入時手数料以外は、年率表示にしています。
まず、運用実績(リターン)を見ると、どの商品も1年、2年、3年すべての期間で、マイナスになっています。
また、「国内債券型投資信託」は、毎月分配型も多く、元本から取り崩すタコ足配当になっているものもあります。
また、分配頻度が高いと複利効果が薄れてしまうため、長期の資産形成には適しません。
次に、金利状況から見てみましょう。
表の中の「最終利回り」は、その商品が投資している債券の利回りから算出されています。
ダイワ日本国債ファンドのように最終利回りが0.3%あれば、損しないのではないか?と考えがちですが、そうではありません。
この最終利回りから、信託報酬が0.2%弱ほど引かれて、残りは約0.1%になります。
金利水準がずっと変わらなければ、この0.1%は受け取れます。
しかし、現在のように、金利が低下余地が殆どなく、逆に上昇している局面では、債券の値段が下がるためリターンが期待できない、そのうえコストだけが引かれて、損失となる状況に陥ってしまいます。
金利が上昇している過程では、金利が固定しているものよりも、変動している方が、上昇の恩恵を受け取れるため、「個人向け国債変動10年」の方が選択肢に挙げられます。
では、国内債券型投資信託は投資に適しないかというと、そうではありません。
購入するタイミングとしては、いくつかあります。
金利面でみると、例えば、10年国債の利回りが1.5%~2%くらいの水準になれば、選択肢の一つになるでしょう。
そういった環境下では、社債などの金利も上昇するため、債券全般に投資妙味が増します。
できれば、日銀の金融政策で利上げが進み、これ以上の上昇余地がないというタイミングがベストですね。
商品性でみると、例えば、どうしても毎月分配金が欲しい場合ですね。
個人向け国債の利払いは、半年に1回のため、毎月分配型の投資信託が選択の一つです。
また、分散して投資したいときや、積極的に運用したいときもそうですね。
「国内債券型投資信託」の売れ筋商品の中には、市場の値動きの倍程度反対の成果を目指す「ベア型」や、物価連動国債をパックにした「物価連動国債ファンド」なども見られます。
ほぼ日本の国債で運用している投資信託と違い、リターンもプラスになっています。
こういったレバレッジや、パック商品というのは、投資信託でないと難しいですね。
どちらが向いているかは、投資の目的や市況によっても異なります。
投資する時は、安易に決めず、その都度、じっくり考えた方がいいですね。
※実際の投資は、ご自身の判断でお願いします。
本記事の解説動画は、コチラです↓
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