投資をされる方にとっては、朗報です。
金融庁は、NISA(少額投資非課税制度)の拡充要望案を2023年度の税制改正に向け8月25日の自民党財務金融部会に正式に提示しました。
NISAの拡充を巡っては日本証券業協会が制度の恒久化や非課税投資枠の拡大を求めてきました。
2024年1月から始まる「新NISA」の枠組み(2020年度税制改正分)が再度見直され、現行より利用しやすくなるかも知れません。
岸田首相が掲げる「資産所得倍増プラン」の実現に向けて、具体的に動き始めたようです。
NISAとは
正式名称は、少額投資非課税制度と言います。
株式や投資信託などの金融商品で得た利益は、通常は約20%の税金がかかりますが、NISA口座内で購入した場合は非課税となります。
イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称がついています。
成年が利用できる「一般NISA」「つみたてNISA」、未成年が利用できる「ジュニアNISA」の3種類があります。
1.一般NISA
2014年1月にスタート。
株式や投資信託などを年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。
2.つみたてNISA
2018年1月にスタート。
積立専用のNISAです。
長期・積立・分散投資に適した投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できます。
3.ジュニアNISA
2016年1月にスタート。
未成年者用(0~19歳)のNISAです。
株式や投資信託などを年間80万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。
2020年度制度改正において、「一般NISA」は内容変更、「ジュニアNISA」は廃止となっています。
前回2020年度の改正案
もともと2020年度の改正案において、2024年1月以降に内容が一部変更されることとなっていました。
※2023年以降の利用者年齢は、すべて18歳以上となります。(開設する年の1月1日現在)
1.一般NISA
(1)利用者
旧:20歳以上
新:18歳以上※口座を開設する年の1月1日現在
(2)非課税対象
旧:株式・投資信託など
新:2階建ての制度
1階部分は「つみたてNISA」と同様
2階部分は上場株式、投資信託など(高レバレッジ投信などは除く)
※原則として1階で投資を行った人が2階で投資できる
(3)非課税投資枠
旧:年間120万円
新:1階部分は年間20万円、2階部分は年間102万円
(4)投資可能期間
旧:2014年~2023年
新:2024年~2028年
(5)ロールオーバー
①「一般NISA」から「新NISA」へロールオーバー可能
②「新NISA」の1階部分は「つみたてNISA」へロールオーバー可能
※ロールオーバーとは、保有資産を翌年の非課税投資枠に移行して継続することです。
2.つみたてNISA
投資可能期間
旧:2037年12月末まで
新:2042年末まで
3.ジュニアNISA
(1)廃止
新規の口座開設は2023年末まで、2024年以降は新規購入ができない
(2)出金
旧:18歳まで不可
新:年齢制限解除
今回2023年度の主な要望案
詳細は与党の税制調査会の議論を経て、年末までに決定する予定です。
1.投資期間の恒久化
現行は「一般NISA」2028年末まで、「つみたてNISA」2042年までの期間限定です。
そのため、開始時期が遅くなればなるほど、利用できる最大の非課税枠が少なくなります。
投資期間が恒久化すれば、どのタイミングでも非課税で投資できることになります。
2.非課税保有期間の無制限化
現行の5年や20年といった非課税の期間を撤廃すれば、終了時の市場動向を気にすることなく柔軟な運用が可能になります。
また、5年の非課税期間が終わった後に、翌年の枠に資産を移し替える「ロールオーバー」の煩雑な手続きも簡素化できます。
3.年間投資枠の拡大
現行は、「一般NISA」120万円、「つみたてNISA」40万円が年間の投資額上限となっています。
「つみたてNISA」には、「成長投資枠(仮称)」を新設し投資信託の他に上場株式にも投資できるように求めています。
具体的な金額は明らかではありませんが、日本証券業協会は7月にまとめた提言にて英国の非課税投資制度「ISA」にならって「一般NISA」年240万円、「つみたてNISA」60万円に引き上げる例を示しています。(最大合計300万円)
4.「つみたてNISA」と「一般NISA」の併用
現行、「つみたてNISA」と「一般NISA」は併用できませんが、「つみたてNISA」に「成長投資枠(仮称)」を新設することで、可能となります。
5.対象年齢の引下げ
子ども名義の口座を開設して投資する「ジュニアNISA」は2023年末で廃止されます。
そのため、「つみたてNISA」の対象年齢を現在の20歳以上から、未成年者まで拡大することを要求します。
税制改正の流れ
税制改正は、経済社会の変化などを踏まえて、その時々の課題を中心に議論が進められます。
作業は、例年、予算編成作業と並行でおこなわれます。
12月に発表される「税制改正大綱」は改正案の骨子であり、内容を把握するうえで特に重要です。
・8月頃
各省庁から要望案が提出される
※財務省は国税、総務省は地方税に関する要望を担当
・9~10月頃
有識者による政府税制調査会が税制の大枠について審議
・11~12月頃
与党税制調査会(自民党と公明党の税制調査会)が「税制改正大綱」への内容を審議
・12月中旬
与党が法案の原案となる「税制改正大綱」を発表
・12月下旬
政府が与党の税制改正大綱をもとにつくった「税制改正大綱」を発表
・1月頃
税制改正大綱を政府案として要約した「税制改正要綱」を提出
・1~2月頃
政府が大綱をもとにした「税制改正法案」を国会に提出
・3月末
国会で税制改正法案の可決・成立(税制改正関連法の公布)
・4月1日
施行
※適用は、その年の1月1日にさかのぼったり、翌年以降になったりします。
まとめ
NISA拡充を巡っては、日本証券業協会も制度の恒久化や非課税投資枠の拡大を求めてきました。
金融庁が7月におこなったアンケート調査では、投資家の6割超がNISAの投資枠拡大を要望しています。
岸田首相が「資産所得倍増プラン」を唱えたことで、NISA創設当時からの悲願を今回の要望案に組み込んだとも言えます。
NISAの利用口座数は、3月末時点で約1,779万。
順調に増加しているとは言い難く、時限措置である点や内容の複雑さが足かせになっているかも知れません。
要望案のすべてが実現するわけではなく、税制は法案として国会で成立しなければ適用されません。
金融機関にとっては不透明となった「新NISA」のシステム対応などの準備は、おおきな負担となることでしょう。
ただ、過去に金持ち優遇批判が強かった制度の恒久化ですが、今のインフレの影響だけを考えても、投資促進の柱として必要かも知れません。
いずれにしても制度内容が投資初心者にもわかりやすく、投資経験者には今以上に利用しやすいように変更されることを切に願いながら、12月発表の「税制改正大綱」に注目したいと思います。
※2022年8月27日現在、記事内容はあくまで予定であり、確定事項ではありません。
※投資は、ご自身の判断でお願いします。
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